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新人賞と応募原稿のマッチングミスをなくすためにできること【ポプラ社小説新人賞への道】

小説家になりたいと思ったことはありませんか?
過去も未来も宇宙も深海も、あらゆる世界を言葉一つで創り出し、想像の力でたくさんの人を楽しませてお金を稼ぐことができる仕事――小説家。

でも小説家になるのって大変なんでしょう?

いえいえ、そんなことはありません。
小説家になるためのてっとり早い方法があるんです。
それは、新人賞を受賞すること!

……なんて言うと、それが大変なんじゃ!というツッコミを受けてしまいますね笑

たしかに大変なのですが、もっと気軽にご応募してほしいし、小説を書くのって楽しい!と思ってほしいと願っています。
このコーナーでは、私達が主催している「ポプラ社小説新人賞」を例にとり、選考において見ているポイントなど、編集者がどういう目線で原稿と向き合っているかを公開していこうと思っています。

小説家デビューを目指す方々に、なにか少しでも参考になれば嬉しいですし、小説を書くことに少しでも興味を持って貰えれば幸いです。

新人賞の傾向を把握する

さて、まずはデビューから。
小説家デビューの方法はさまざまです。
最近は「小説家になろう」「エブリスタ」など小説投稿サイトからデビューする人も多いですが、オーソドックスなデビュー方法は、出版社が主催している新人賞に応募し、賞を受賞してデビューするという形です。
マンガの場合は持ち込み原稿を受け付けていることも多いですが、小説はあまり持ち込みを受け付けておらず、そこからのデビューはなかなかありません。

新人賞の情報は各出版社のHPに掲載されていますが、いろんな新人賞情報を知りたい方は、コンテストの総合サイトをチェックするのがおすすめです。
たくさんありますが、公募ガイドさんや登竜門さんなどが有名です。

(小説に限らず、いろんな公募の賞がまとめられています)


新人賞といっても、たくさんあります。
どこに応募したらいいかわからず、原稿が書きあがったタイミングで締め切りが近かった賞に応募する。そんな人も多いと思います。

でも、ちょっと待って!
本当にそれでいいんですか?

どの新人賞も同じに見えるかもしれませんが、各出版社の賞によって、求める作品や作風は違いがあります。
せっかく作品が面白いのに、純文学の賞にライトノベルを送ってもしかたないですし、ミステリの賞に時代小説を送ってもプラスに働きません(ミステリとして成立している時代小説は別です)
自分が書きたいものと、出版社の求めているものがマッチングすることが望ましいので、その新人賞がどのようなカラーなのか把握したうえで応募することをお勧めいたします。

彼を知り己を知れば百戦殆からず(by孫子)みたいなものです。

私達も新人賞の選考をしていて、「この原稿、あそこの○○賞に送ったらよかったのに……」と思うことが時々あります。
ある出版社の新人賞では落選したけど、別の新人賞に応募したら受賞した、ということもありますが、それはマッチングミスの部分が大きい可能性があります。
意外と見落とされがちですが、新人賞を研究することはとても大事なのです……。


わたしたちポプラ社も「ポプラ社小説新人賞」という新人賞を開催しています。
なんと今年で10回目!


このコーナーを始めたのは、ポプラ社小説新人賞への応募を増やしたい、という下心が大いにあるのですが、宣伝も兼ねてそのカラーを語りつつ、弊社の場合だったらどんな志望者に向いているかを挙げていきましょう。


ポプラ社小説新人賞の特徴

<ノンジャンルの賞>
ポプラ社小説新人賞が求めるのは広義の「エンターテインメント小説」です。
ジャンルの縛りはなく「面白ければいい!」という視点で選考しているので、過去には時代小説から青春小説まで、様々なジャンルの作品が受賞してきました。
スポーツ小説からほっこりまでなんでも来い!です。


<選考を社内で行っています>
多くの新人賞は最終選考の選考委員をプロ作家が務めますが、ポプラ社小説新人賞はすべての選考を社内の人間で行います
一次選考から編集者が全ての原稿に目を通し、最終選考では社長や営業・宣伝のメンバーが参加して賞を決定します。
それは「ポプラ社」として応援したい作家を選びたい、という賞の理念によります。
営業が「この作品を売りたい!」と思い、編集者が「この作家と仕事したい!」と思った作品を、会社を挙げて推す。そうした思いのもと、毎年賞を決定しています。


<書籍化のチャンスが多い賞です>
新人賞の受賞作は書籍化することを前提に選考しています。
特別賞・奨励賞も書籍化されることが多いですが、著者と相談の上、ベストな形でのデビューを探ります。書籍の形態は単行本・文庫と様々です。
また、受賞ならずとも最終候補作からデビューするケースもあります
受賞には至らなかったけれど、編集者が「この人と仕事をしたい!」と手を挙げれば担当になるので、その情熱がデビューに結びつくケースもありました。


ポプラ社小説新人賞はこんな人におススメ!

<とにかく「面白い」小説が書きたい人>
自分の作品がどのジャンルに属するのかわからないけど、「面白さ」には自信がある。そんな人にはオススメです。


<色んな人と一緒に作品をブラッシュアップしたい人>
受賞作はポプラ社一丸でプッシュします。
ベストな作品になるよう編集とブラッシュアップし、営業が色んな販促を考えます。そうしたやりとりを楽しんでもらえる人にはオススメです。


もしかしたら別の賞に応募したほうがマッチングするかも

<明確に書きたいジャンルがあり、そのジャンルの賞が存在する場合>
たとえば、ミステリが書きたいならば東京創元社さんの「鮎川哲也賞」「ミステリーズ!新人賞」があります。SFであれば早川書房さんの「ハヤカワSFコンテスト」があります。純文学であれば文藝春秋さんの「文學界新人賞」といったように、自分の中で明確に書きたいジャンルがあり、そのジャンルを求めている新人賞がある場合は、そちらに応募することをおススメいたします。

<好きな作家が他の賞の選考委員を行っている場合>
ポプラ社小説新人賞は、社内の人間で選考を行っています。逆に言うと、選考の過程においてプロ作家が原稿に目を通す機会はありません。
もしも大好きな作家がいて、その人がどこかの新人賞の選考に携わっている場合は、そちらへの応募をおススメいたします。憧れの作家に自分の作品を読んでもらえる機会はなかなかありません。


<エログロ暴力描写が多い作品>
ポプラ社は児童書の出版社で、児童書の持つ優しさや温かさのある空気は一般書も大切にしています。
必然性のあるアダルトシーンや暴力描写はべつに構わないのですが、その意図があまり感じられない作品などは、ポプラ社小説新人賞においてはマイナスに働く可能性があります。



いかがでしょうか。
ポプラ社小説新人賞の特徴を挙げましたが、他の出版社の新人賞も、それぞれのカラーや特徴があるはずです。
新人賞のカラーを把握するには、過去の受賞作を読むのが一番
色んな本を読んで研究し、自分がデビューしたい新人賞を捜してみてください。


次回は「選考にあたって編集者が見ているポイント」について公開予定です。(変更になるかもしれません)


それではまた!

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