RSR19で銀杏BOYZを見た

個人的毎年夏の恒例(にしたい)行事、RISING SUN ROCK FESTIVALに今年も行ってきた。
初日が台風で中止、NUMBER GIRLの復活ステージが見られないという大波乱があったわけだが、1日だけでも今年も最高のステージがたくさん見られた。

その中で夜の10時半頃、銀杏BOYZのステージを観た。

銀杏BOYZというバンドは自分にとって特別なバンドである。
高校生の頃、文化祭のグランドフィナーレでその年の文化祭の締めくくりで演奏した曲が他ならぬ銀杏BOYZの「SKOOL KILL」であった。
バンドを始めた頃にとても熱中して聴いており、ライブに行って前列付近でもみくちゃになったこともあった。

しかし大学に入って他のジャンルの様々な音楽に触れるようになるにつれだんだんと聴かなくなり、興味が薄れていった。
今回のRSRでもラインナップに入っていること自体途中まで気づいておらず、タイムテーブルが発表された時に他に見たいものもないしまあ銀杏見に行くか、くらいの気持ちだったのだ。
つまり、「過去好きだったが今はそこまで興味のないバンド」という立ち位置になってしまっていたのである。

ところが、だ。
この日のステージはとても特別な思い出となった。


演奏が始まると、冒頭はとにかくパンクでラウドな演奏。
「この感じが歳とるにつれあんまり聴けなくなっちゃったんだよなあ。」なんてスカしたことを思いながら観ていたところ、2曲目が終わった後のMC。
「自分が本当に思ったことをそのまま歌っている曲」という紹介で始まったのは、他でもない「SKOOL KILL」だった。

「君のことが大好きだから」と峯田が歌い出した瞬間、一瞬にして僕の心は高校生のあの頃に戻る。気づくと高く突き上がる拳、息は上がり、五臓六腑が湧き上がるような感覚。
歌詞だって、そらで全部歌えるんだ。客席に飛び込んでろくに歌えない峯田をよそに、僕の口からは何かを思い出すように「SKOOL KILL」が溢れんばかりの勢いで飛び出して行く。

僕は一瞬にして「銀杏が大好きだったあの頃の気持ち」を取り戻した。

そのあと2曲最近の曲が演奏されたが、もはや僕には知ってる曲とか知らない曲とか、そんなことも関係なくなっていた。
最近の曲であっても銀杏BOYZらしい音楽性は当然たくさん垣間見える、それだけで十分だった。最高だった。

そして再びのMCで、次に演奏する曲が「夢で逢えたら」だと知らされ、興奮は最高潮に。
大好きなメロディー、大好きなベースライン。
夢中になっていた曲の姿は色褪せることなく目の前に現れ、「大人」になった僕にこびりついた感覚を瞬く間に剥ぎ取って行く。
「パンクはもう聴けない」なんてなぜ思っていたのだろうか、最高じゃないか。
ステージ始まる前には想像し得なかった、想像しようがなかったほどの体験がそこにはあったのである。

そしてとどめに「BABY BABY」。
きっとこの時、僕だけでなく、会場全体が10年前に戻っていた。
きっとみんな同世代、僕と同じように色んなことを忘れて、成長してそこにいた。だけど心のどこかには同じように10年前の自分がいて、そいつらが10年ぶりにこぞって顔を出してきたのだ。
音楽って本当に楽しいな、最高だな。ライブでみんなで音楽を共有しあって、バカみたいに歌いあって。病みつきになっちゃうな。

17歳の僕と27歳の僕は、共に声を枯らして「BABY BABY」を歌い続けた。

あの時の僕の気持ちは「懐かしい」とか「エモい」とかそういったありきたりな郷愁感を超えていたように思う。
銀杏BOYZが懐かしかったのではない、もはやあれは音楽を、バンドを始めた頃の純粋な憧れの気持ちとの再会だったのだ。
音楽的感覚の成熟も、技術の成長も全くなかったあの頃、それでもがむしゃらに音楽をやり続け、音楽に憧れ続けた自分の姿は、高校を卒業して10年経つ間に、どんどんと自分の瞼の裏から消えていっていた。
そんな大事な頃の気持ちが消えて行っていることに気づいていなかったのか。ひょっとしたら気づいていたけど、そんなもの消えた方がいいとさえ思っていたのかもしれない。成長の代償だったのだとしたら仕方のないことだと思う。

でも、あの時僕は、10年前の自分と再会できたことに、なぜだかとてつもなくうれしかったんだ。


感動の再会も束の間、銀杏BOYZのステージは1時間弱で幕を閉じた。
10年越しの再会は、北海道の夜空にたちのぼって消えて行った。
また寂しくなるけど、ここでもらった気持ちを大切に、またしっかり進んでいけたら良い。

でも、忘れた頃に、またいつか。

夢で逢えたら、いいな。

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