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私と短歌(10)外村ぽこさんの場合

はじめに

「私と短歌」は、ぽっぷこーんじぇるがツイッターを活動の場とする歌人にインタビューをする(そして自分もちょっと喋る)企画です。
第10回は外村ぽこさんです。

🍿ぽっぷこーんじぇる
🐢外村ぽこ


1.自己紹介

🍿まずは簡単な自己紹介をお願いします!

🐢どうも!こんにちは!外村ぽこです!田舎好きの亀です!!

🍿かわいい亀のアイコンですね!名前やアイコンの由来をうかがってもいいですか?


アイコン

🐢名前は実は恋人からのあだ名なんです…w
自分がいろいろとやらかすのでポンコツと呼ばれていていつしかぽこになりました!それが気に入ってしまったのでそのまま使っています!
アイコンはシンプルに亀が好きなのと自分の性格が亀っぽいなーと思うところからです!のんびり長生きしたいなーと思っていますw

🍿なるほど!これもほがらかな理由ですね。ちなみにアイコンの絵は自分で描いたものですか?

🐢お恥ずかしながらそうです!著作権とか怖いなー→じゃあ描くかーってノリですw

🍿ヘッダーのでんぐり返し亀さん、いいですね……!!

ヘッダー

🐢ありがとうございます!自分でもお気に入りです!


2.きっかけ

🍿次の質問にいきますね。短歌をはじめたきっかけは何ですか?

🐢短歌をはじめたきっかけは木下龍也さんの情熱大陸を見たことです。本当に偶然、番組表を見て『歌人』という文字に惹かれました。番組を見て一気に引き込まれて自分もやりたいと思って始めて今に至ります。そうゆう意味では短歌ブームにあやかった形なので賛否あると思いますが自分は短歌ブームに感謝しています!

🍿木下龍也さんなり、俵万智さんなり、あるいは三浦くもりさんだったり、短歌を特集した番組からはじめる人も多いでしょうね。すばらしいことだと思います。
番組で記憶に残ってる歌はありますか?

🐢紹介された歌はどれも素晴らしかったのですが強いて一首挙げるなら『邦題になるとき消えたTHEのような何かがぼくの日々に足りない』です。ちょうど自分の人生の空っぽさに虚しさを感じていてnoteを始めた時期でもありました。そこでエッセイやショートショートを書いていたのですが当時の心境をズバッと言い当てられたようで思わずテレビに「すごい」と呟いたのを覚えています。

🍿なるほど〜!いい歌ですね!好きな歌に出会うと声が出ちゃいますよね。外村さんはこのようなもやもやを、短歌をはじめたことで少しは解消できましたか?

🐢そうですね!短歌を通して自分を知ってもらえるのはとても嬉しいですし自分の歌を好きと言ってくれる人もいるので短歌を始める前に比べるとかなり充実していると思います!


3.感じたこと、良かったこと

🍿次の質問にいきますね。すこし重なりますが、短歌をはじめて感じたこと、よかったことはありますか?

🐢さっきもちらっと言ったのですが短歌を始める少し前にnoteで色々と書いていました。そこで自分の思ったこと、言いたいことを綴っていたのですが短歌を始めてめっきりnoteが書けなくなってしまったんですね。今まで自分が1,000文字かけて書いていたことは案外31文字で表現できるのかもしれないと思ったことが大きかったです。また短歌ぐらいの程よい制限がある表現のほうがやりやすいと個人的には感じています。良かったことはシンプルにこんなに夢中になれる趣味が見つかったことですね。自分は無趣味なので人生でこんなにのめり込んでいる趣味はないんじゃないかとすら思っています。ずっと続けていきたいと思ってますし、いずれ歌集の商業出版をしたいとわりと本気で思っています!

🍿短歌で、たとえば1,000文字の内容が伝わってしまうとしたら、それはとんでもないことですよね。短歌の魅力はこんなことろにもありそうです。 短歌や俳句は長く続けられる趣味だと思います。ぜひ商業デビューしてください……!


4.作るとき/実際の作品

🍿短歌をつくるときはどのようにしていますか?

🐢自分は短歌を作るときはお題が欲しいのでうたの日の参加や自分で #記念日を詠む というハッシュタグを作って詠んでいます。量を詠んでいきたいのでこの2つは毎日やることを決めています。理想としては哲学的な共感性の強い歌が読めたらいいなと思っています。気分転換に自由律短歌に挑戦することもありますね。また、稀に寝ようとして布団に入ったあとや寝起きのときに言葉が降りてくることがあります。これは自分の潜在意識だと思っていて個人的にはすっっごい好きな歌ができています。ただ確実にうたの日向けじゃないと思っているので公募用にストックしていますw

🍿かなりたくさん作っているんですね。題詠をするときは、題とどのように向き合っていますか?

🐢うたの日はお題が一文字のことが多いのでその文字を含む単語を列挙することが多いですね。そうすると大体使いたい単語が決まるのであとはその単語が自分にとってどうゆうものなのかを意識して詠みます。自分なりの単語が持つイメージや意味、それがもたらすメタファーなんかを歌に落とし込むよう意識してます。花なんかは花言葉を必ず調べるようにしますね。

🍿なるほど。花を詠むときはやっぱり花言葉を意識しますか?

🐢めちゃめちゃしますね!自分は花のある人生を歩んでいないのでわりと概念として花を捉えてしまうふしがあるので…なのであまり花を詠み込んだ歌は少ないかなとも思います。

🍿具体例を教えていただくことって出来ますか……?

🐢絶対に一人にしないって言ったじゃん 墓前に横たわるクロッカス

紫のクロッカスには「愛の後悔」「私を裏切らないで」という意味があるようです。恋愛に限ったことではないかもしれませんが親しい仲では当然のように「ずっと一緒だよ」と言うこともあるかもしれませんが二人がずっと一緒にいれることはまずないだろうなと思って詠みました。誰かを愛することはその人の人生を預かるのに等しい行為だと思っています。

死後に消す約束をしたパソコンのデスクトップに片栗が咲く

マミヤミレイさんとの連作で詠んだ歌です。カタクリには「寂しさに耐える」という意味があり、この連作の主体は大事な人と死別したという設定でした。死後にパソコンを消してくれなど冗談めいて言っていたことを本当に実行しないといけなくなった主体の心情を表せるかなと思いチョイスしました。

私から嫌ってやったのだと言ふ屁糞蔓の茂る公園

ヘクソカズラの花言葉は「人嫌い」です。人は嫌われているときどうゆう反応をするでしょうか。自分の何が悪いのかと思う人もいればこの主体のように強がる人もいるでしょう。そんな主体の強さと弱さが両方見えるといいなと思って詠みました。ちなみに「誤解を解きたい」という花言葉もあるので読み手によって歌意が変わるかもしれません。

エンゲージリングによって埋められた孤独の底に咲くライラック

ライラックには「初恋の香り」という花言葉があります。主体は生涯を共にする人を見つけ二人で歩む人生になりました。それでも初恋の人には恋愛感情を超えた特別な感情を抱いてしまうのは自分だけでしょうか。きっと一生忘れることはできない、それでも一生交わることはない。そんな人への気持ちを詠んだ一首です。 長くなりましたね!さらっと読んでくれれば幸いです!

🍿ありがとうございますー!偶然かもしれませんが、全体的に紫の花が多いですね。重たい愛情は紫色のイメージがあるのかもしれません。 また、屁糞葛は漢字が漢字ですから、花言葉を知らなくても十分に伝わりそうですね。どれも面白い歌で刺激的でした。

🐢確かに!言われて気づきました!花は漢字にするかカタカナにするかも悩むポイントではありますね。面白いと思っていただけて光栄です!🥰

5.好きな歌

🍿どなたかの好きな歌を教えてください!

🐢挙げだしたらキリがないのでとりあえず三首だけ!

未来って読めないけれどきらめいて涙でにじむネオンみたいだ/木下龍也

やわらかいものを食べようそのあとに寝ようねいくつもはない夜たち/野村日魚子

I am a 大丈夫 ゆえ You are a 大丈夫 too 地上絵あげる/橋爪志保

などが好きです!人生の支えになるというか辛いときにふと思い出すような歌に憧れがあります!

🍿ありがとうございます!個人的には野村日魚子さんの歌が気に入りました。外村さんはこの歌をどう読みましたか?

🐢この歌すごい良いですよね!自分はわりとそのまんま読みましたね。婉曲的に頑張らなくていいよって言ってもらえているような…それでいて夜というのはやはり辛いことの比喩とされることが多いと思うのですがそれを「いくつもはない」と言っているのがいいですね。極論かもしれませんが「どーせ人はいつか死ぬじゃん?」みたいな楽観さがあるような気もしています。好きです。

🍿なるほどなるほど。「いくつもはない夜たち」と、夜に呼びかけているようなところが面白いなと思いました。いい歌ですね。


6.外村ぽこさんの歌について

🍿外村ぽこさんから自選百首と連作を教えていただきました。そこからいくつかを選んで感想を述べさせていただきます。

大人とは子供が進化したものでぼくはリザードンが好きだった

子どものころの「ぼく」はリザードン、つまり子ども(ヒトカゲ)の進化した姿が好きだったと。でもそれは過去形なんですね。大人になった「ぼく」はまだリザードンが好きなのでしょうか。「ぼく」は「ぼく」に好かれるような進化先=大人になれているでしょうか。

みんなとは数多のひとり 孤立したひかりを結ぶ星座みたいだ

「みんな」という大きな言葉でくくったところで、結局は「ひとり」の集まりでしかない。でも、「みんな」という言葉には、そうした「孤立した」「ひとり」……「ひかり」を結びつける役割がある。ここに「みんな」の価値があるのでしょう。結句の「星座」という比喩が見事です。

おもむろに夜に駆け出すハムスターそうかお前はスターだもんな

下の句の面白さに惹かれました。ものすごいスピードで駆け出したんでしょうね。時間帯が夜というところも、虹色に輝くハムスターが見えるようでドキッとします。

結婚を機に移り住むわたくしを見初めたような海の輝き

「わたくしを見初めたような海の輝き」とは随分と胸を張った言葉ですが、結婚したときの気分とはこういうものかもしれません。正岡子規に「真砂なす数なき星の其中に吾に向ひて光る星あり」という歌がありますが、子規と比べても力強い歌です。もっとも、子規の歌は亡母の息子を思う光を詠んでいるのですが。

こんな俺なんかが買ってごめんなと西日を浴びるサボテンに言う

この歌も「西日を浴びるサボテン」という景が鮮やかな歌です。対して主体の態度は弱々しいですね。しかし、オレンジ色に輝くサボテンを見ると、たしかにエキゾチシズムを感じずにはいられないですね。

ゆっくりと間延びしてゆく人生に抗うために冬を選んだ

冬の厳しさは「山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬとおもへば」(源宗于)や「冬蜂の死に所なく歩きけり」(村上鬼城)などによく表れていますね。「人目も草も」れ、「蜂」も躍動を失う季節です。
しかし、この歌の主体はあえて冬を選びました。なにかのために懸命に生きているのでしょう。そうして冬を耐えしのげば春が来る……というのはレトリックに過ぎませんが、苦境に負けじと生きる人間は美しいです。ほんとうに。「地の涯に倖せありと来しが雪」(細谷源二)という句が重なります。

最後に、連作を挙げさせていただきます。連作はさまざまありますが、ひとつの情景を多面的に描くのが基本的なやり方になるのでしょうか。まさに主体の「田舎偏愛」が見える連作です。

『田舎偏愛短歌』
最寄りには地方鉄道しかなくてJRではしないイヤホン
コンビニの駐車場には都会とは違うかたちで孤独が埋まる
この町の生命線とされている通りに並ぶドラッグストア
高速に乗れば片道一時間 映画の予習なら済んでいる
午後八時 街灯もない道だから月が哀れに思って照らす
お洒落ってときには命より大事 白銀に咲く赤いスカート
喪失に慣れることなくほっとけば地図から消える町をいきてる
終電の時間だからと解散しまだ終わらない今日を引き摺る
二年前放送されたバラエティーここは時間の流れが遅い
観光をするならどこ?と聞かれても何も言えないけど好きな町

🐢めちゃめちゃ丁寧に読んでいただき感無量です!短歌やってて良かった〜って思います!ありがとうございます!


7.目標

🍿短歌をつづけていくうえで目標はありますか?

🐢そうですね、先程も言ったのですが一番大きな目標は『歌集の商業出版』です。自分の性格上、好きだけで続けられるか不安なところがあって短歌が苦しくなったときに辞めずにいれる拠り所として短歌でお金を稼げるようになりたいという目標があります。そのためにも自分の歌を磨いてお金を払ってでも読みたいと思ってもらえる歌人になりたいですね!

🍿ありがとうございます。外村さんの歌が一層素晴らしいものになることを心から祈っております。 この度はありがとうございました!

🐢こちらこそありがとうございました!とても楽しかったです!


外村ぽこさんのTwitterはこちら

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