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三島由紀夫の本を愛好する海外の音楽家たち

三島由紀夫は世界的に人気のある作家であると言われています。そこで今回は音楽家に焦点を絞って、海外のミシマ・ファンについてまとめました。


1.デヴィッド・ボウイ

世界的なロックスター、デヴィッド・ボウイ(デイヴィッド・ボウイ)は大の読書家でもあり、彼の作品へのインスピレーションの源には読書があるというほど。
そんなボウイの愛読書リストには、三島由紀夫の本も含まれている。ボウイのお気に入りは、『午後の曳航』や『豊饒の海』の第一巻の『春の雪』だという。

ボウイが描いた三島の肖像画と横になるボウイ

このようにボウイは三島の大ファンともいえるのだが、ボウイはまた次のようにも語っている。

三島の生き方は大変な苦労と困惑の産物だと思いますが、彼の生き方そのものには全く感銘を受けていません。彼の文学に非常に心を動かされているのです。

https://twitter.com/DavidBowieBot/status/952337083086983168

つまりボウイは、ただ単純に三島に心酔していたのではないようだ。おそらく彼は、三島の衝撃的な最期も含めて彼のライフスタイルは好きではない。しかし三島の文学作品には非常に影響を受けているということだろう。


2.パティ・スミス

「パンクの女王」と称される女性シンガーソングライターのパティ・スミス。スミスも大の読書家であり、日本文学にも造詣が深い。彼女は特に村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を絶賛している。
そんなスミスは三島由紀夫の本も読んでいるようで、三島の『スタア』という短編をお気に入りとして挙げている。

 ※この『スタア』という短編は海外で人気の様子。現在、日本では新潮社から出ている『殉教』という三島自選の短編集に『スタア』が含まれている。ちなみに三島は『スタア』に「現代的貴種流離」という短い脚注をつけている。


3.デヴィッド・シルヴィアン(元ジャパン)

かつてニューウェイヴ、アートロックのバンド、ジャパンでフロントマンを務めていたデヴィッド・シルヴィアン。ジャパン解散後はジャズやアンビエント、前衛音楽など音楽性の幅を広げていくが、彼の書く歌詞の高い文学性も魅力的である。
彼の高い文学性の源には読書によるところも大きいだろう。シルヴィアンの好みの作家には、サルトル、コクトー、ヨーゼフ・ボイス、クンデラなどが名を連ねるが、その中には三島由紀夫も含まれている。
シルヴィアンは三島の大ファンであり、三島の『禁色』が愛読書だそうだ。

シルヴィアンと坂本龍一の共演

大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲の「禁じられた色彩」は作詞がシルヴィアンで作曲が坂本龍一である。シルヴィアンはこの楽曲にあたって三島の『禁色』から着想を得ている。


4.ジャン=ジャック・バーネル(ザ・ストラングラーズ)

ロックバンド、ザ・ストラングラーズでベーシストを務めるバーネルは、大の親日家である。空手を好み、日本のアニメ作品にも楽曲提供している。
そんなバーネルは三島由紀夫を愛読しており、三島の『仮面の告白』や『豊饒の海』の第一巻の『春の雪』に心酔している様子である。
ちなみに、ストラングラーズには「Death and Night and Blood (Yukio)」という楽曲まである。


5.ビョーク

アイスランド出身の女性シンガーソングライター、ビョーク。幼少期から顔立ちが日本人的であると言われていたらしく、その影響で日本文化にも興味を示す。空手を始めたり、石岡瑛子や川久保玲、荒木経惟など多くの日本人クリエイターをリスペクトしている。
そんなビョークは日本文学も好んでおり、特に三島由紀夫の文学を好きだったようだ。(※残念ながらビョークが好きな三島の本はわかりませんでした)

日本人的な顔立ち(らしい)ビョーク

しかしビョークは三島を敬愛してはいるものの、過去に三島について「素晴らしい作家だけど、10代の頃に読むものでしょう」と語っていた(らしい)ので、ビョークはティーンエイジャーの時に最も三島に影響を受けていたということだろうか。


6.リッチー・エドワーズ(元マニック・ストリート・プリーチャーズ)

ロックバンド、マニック・ストリート・プリーチャーズで作詞やギターを担当していたエドワーズ。
彼は生前、うつ病やドラッグ、アルコール依存症などに悩まされた末に失踪してしまい、見つからないまま死亡宣告がなされた。このようにエドワーズは過酷な人生を歩んでいたのだが、彼のそばにはいつも本があった。
エドワーズは文学に傾倒しており、日本文学も好んでいた。日本文学では井伏鱒二や太宰治、谷崎潤一郎などを敬愛していたが、その中には三島由紀夫の本もあった。エドワーズは特に三島の『愛の渇き』をお気に入りとして挙げていた。


7.ジェイミー・ステュワート(シュ・シュ)

まだ日本での知名度は高くないが、アメリカのエクスペリメンタル・バンド、Xiu Xiu(シュ・シュ)のメンバーであるJamie Stewart(ジェイミー・ステュワート)は読書を愛好している。
彼は日本の文学や映画も愛好しており、日本文学では三島由紀夫や大江健三郎、日本映画では鈴木清順や今村昌平を好んでいる。(※残念ながら三島のどの本が好きなのかは不明)
特に三島由紀夫の作品については、「もっともっと自分が若いころに出会っていればよかった」と語っており、ビョークと同じような考えを持っているようだ。


8.ミシマ

カナダのインディーポップのバンドに、Mishima(ミシマ)という名前のものがある。この名前はもちろん、三島由紀夫からとられたものである。
しかしながら、ミシマに関する情報が少ないので詳細は不明。おそらく彼ら/彼女らは三島由紀夫のファンなのだろうと推測される。
 
 ※余談だが、筆者は以前テレビ番組でロシアのインディーズのバンドにインタビューしているものをたまたま見たのだが、そのバンドの名前はムラカミであった。バンドのメンバーが村上春樹と村上龍が好きだからという理由だったと思う。ミシマも同じような経緯なのではないか。


9.ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ

ドイツの作曲家であるヘンツェは、高齢になってからもオペラの創作を続けたことで知られている。
そんなヘンツェは三島由紀夫の作品に魅了されており、特に三島の『午後の曳航』に感銘を受けた。そして彼は『午後の曳航』のオペラ化に着手し、それを原作とした歌劇『裏切られた海』を完成させた。



まとめは以上になります。
好きなミュージシャンをきっかけに本を新しく読むというのは個人的には多いです。これを読んでくれた方にも新しくきっかけが出来たりすれば幸いです。

今回は9組を取り上げましたが、元ザ・スミスのモリッシーとジョニー・マーやニック・ケイヴ、ルー・リード、イギー・ポップ、フレディ・マーキュリー、ジェフ・バックリィなども三島由紀夫を読んでいてもおかしくないよなあと思いました。(彼らが三島を読んでいたという情報はないので、ただの願望になります…)

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