【第1回】綾野星野映画祭 感想

「MIU 404」にドップリはまって関連記事を読んだりラジオを聴いたりしているうちにすっかり両氏に魅せられてしまったので、連休に彼らの映画をなるべく多く鑑賞しようとして一人で実施した「第1回 綾野星野映画祭」。各作品の所見などを簡単にしたためてゆきたいと思います。

■『日本で一番悪い奴ら』★★★★

まずはこのアンケートを見ていただきたい。

「綾野星野映画祭」を開催するにあたり、何を一番はじめに見るべきか悩んでアンケートをとった結果、ダントツで一位だったのが「日本で一番悪い奴ら」であった。結果的に「フォロワーたち、私のこと殺す気だったのか?」とTwitter殺人事件を疑うくらい脳味噌がグチャグチャに。映画祭のしょっぱなで、綾野剛氏の役者ぢからを思い知らされることとなった。

1970年代からゼロ年代までを、柔道チャンピオンから刑事になった諸星要一(綾野剛)が、暴力とチャカとシャブと紫煙と共に駆け抜けてゆく物語。北海道の治安が最悪な映画でもあるが、実話を元にしているというから驚きである。凄まじくガラの悪い映画だが、その「悪い事」を、まるっきり私たちが必死に生きているのと同じようなトーンで行う彼らがおかしくてたまらず、終始爆笑して鑑賞していた。とても疲れた。

若い頃の素直すぎておバカな諸星が、あっという間にヤクザみたいに態度がでかくなり、シャレにならないレベルでヤカラ感を出してくるのは痛快でもありちょっと寂しい。私は昔の純朴な諸星が好きだった。人生に、推しの濡れ場を見て「うへぇ、ヘタクソ~!」と拍手する日が訪れるとは思ってもみなかったよ…。だが、この約30年の間でちゃんとセックスも上達している描写があってそれはそれでよかった。というか映画のスケベシーンに意味・文脈を感じたのは初めてだった。

「とにかく綾野剛は凄い役者である」という事実を、バッドで殴られるかのように痛感させられる一本である。だが「MIU 404」をロスっているこのタイミングで見たのが正解だったのかは不明だ。フォロワーたち、俺は正しかったのか? とにかく、しばらく北海道には行きたくない。

■『引っ越し大名』★★★★★

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こちらも最初に何を観るべきかアンケートを設置した。

こちらは綾野氏ほど票が割れなかったのだが、自分でも唯一ノーマークであった「引っ越し大名!」が一位となり、迷わずこれを観ることにした。

私は日本の時代劇が嫌いだ。侍はハゲてる上、すぐ切腹をするきもちのわるい生き物だからだ。ファッション的にも伝統的な着物やちょんまげに全く興味がない(好きなのは明治から昭和初期)。しかしこういうコメディの時代劇なら切腹など重苦しいシーンはないし、星野源の前髪といい最後まで月代なしでつらぬいた高橋一生といい、ショタ全開モードだった(でも星野源は月代が似合っていた)ので愉快に観ることができた。
かなり軽いタッチの作品なので「ザ・映画を観た!」という気分にはならないが、主人公の行動に終始同意ができる作品で、最後まで気持ちよく観ることができた。やはり主人公が文官の作品は当たりが多い。

星野源演じる内気な書庫番・片桐春之介が、無理めの仕事(タイトルどおり引っ越しである)を無茶振りされてみんなでワオワオする話。非常に地味な話であるが、社会人なら共感するシーンが非常に多いし、幼馴染の鷹村(高橋一生)の派手なアクションなどもあり大変バランスがよかった。NHKの「おげんさんといっしょ」でも夫婦役(逆だが)をやっている高畑充希のコミカルな芝居と大袈裟な歌声も好きだ。

星野源が演じる役といえば、このような内気で人のいいキャラクターがメジャーなのだろう。袴姿で子どもと手をつなぎニコニコしている星野源は、この世のものとは思えぬ愛らしさであった。本作は、彼のキュートさと真摯さで切り開かれていく物語だったとも言えよう。きつい仕事こそみんなで楽しんでやること、部下を「皆」でまとめず一人ひとり対話することの大切さが描かれており、とても元気の出るの映画だった。

■『亜人』★★★★

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亜人は映画館でも観たことがあるので2回目の鑑賞となる。この映画、自分の好きな顔の男ばっかり出てくるので本当に不思議な気分になる。また、芸人枠のピンポイントでの使い方が妙に印象的なのもお気に入りだ。

私は男の裸体にあまり興味がないのだが、この作品で見た綾野剛の全裸シーンはシチュエーションの妙もありすごくよかった。あまりにそのシーンが気に入っていたらしく、久々に見たら「あれ、もっと長い尺全裸じゃなかったっけ?」となってしまった。もちろん主演・佐藤健の裸(ら)もあり、すごく得した気分になった。ものすごく薄っぺらい感想だが、私にとっては大事件であった。

序盤の人体実験シーンは拷問が地雷の人間にはものすごくキツいが、そこさえ越えれば大変見ごたえのあるアクションを楽しめる。多少のグロ耐性がある方には是非見放題のうちに観ていただきたい。

■『シャニダールの花』★★★★★

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綾野剛の繊細な演技が観たい…と思っていたらフォロワーさんが勧めてくれたので優先して観た。おすすめしていただくまでタイトルすら知らなかったのだが、綾野氏の作品としてもあまり話題に上がらないらしい。私にとっては大当たりであった。

綾野剛と黒木華の繊細な演技に魅せられつつ、作品に出てくる人物の心のかたちが手でさわれるくらいにわかるフィルムだった。体に花が咲いてしまった患者の女性たちはそれぞれ大きな不安や嫉妬を抱いているが、それが不思議と醜くない。映像の隅々まで監督の美学が詰まった素晴らしい作品で、終始釘付けだった。

本作の綾野剛演じる大瀧は、植物学者で主にスーツのうえに白衣を羽織っている。真ん中分けの髪型も大変美しい。ラブシーンが控えめなのも空気感が壊れなくてよかった。彼の硝子のように透き通ったビジュアルと演技を堪能するのには最適な一本ではないだろうか。

■『箱入り息子の恋』★★★

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夏帆、星野源ともにキャラづくりが完璧だった。何もかも諦めていて表情のない健太郎が、目の見えない奈穂子との恋を通して笑顔を見せるようになる描写には、終始心が浄化されるようだった。

しかし本作品のサビであろうラストが全く理解できず、共感性羞恥の塊になってしまった。この作品のメインは健太郎の暴走なんだから正解なんだろうけれど…。それ以外はとてもとてもよかったので、真っ当に評価しようとすると引き裂かれそうになってしまう。

好きなシーンは2回目の吉野家。これは数ある人日本映画の中でも屈指の美しいシーンなのではないだろうか。その後からもやもやの展開になるのだが。メインの家族が豪華すぎて両方とも箱押ししたい。それ以外のキャラだと、みんな同僚のふなこしさんが好きになっちゃうと思う。

「第2回 綾野星野映画祭」に向けて

星野源作品で残っているのが「地獄でなぜ悪い」なので、次の連休には「新宿スワン」を併せて園子温縛りの「第2回 綾野星野映画祭」を開催しようと思う。あまりに濃すぎて2キロくらい痩せそう。

また、10/30には星野源が小栗旬とダブル主演を務める『罪の声』の公開も控えているので非常に楽しみだ。

私はSAKEROCKの星野源に自分がド嵌りすることに何故か納得がいかなかったのだが(今でもバンド内ではハマケン推しだ)、一週間くらい前に自分が星野源を大好きであることを認めた瞬間、コロナ以降ずっと悩まされていた睡眠障害がいきなり治ったので度肝を抜かれた。彼の実質ファンクラブである「YELLOW MAGAGINE」を購入してパス登録したり、おげんさんのねずみを愛でたり、彼が表紙の雑誌を買いにいったり日々忙しくファンダム活動を行っている。

星野源は体にいい。綾野剛はたまにジャンクフードだ。毎日が刺激的で飽きない。私はまだまだこの二人を応援し続けてゆくつもりである。また、一人で開催した映画祭だが、同じタイミングで似たように両者の作品を鑑賞している人たちも少なくはなく、ファンダムっていいな~と更なる没入感を感じたのだった。あーしあわせ。

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