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デザイナーの仕事は汚れたメモ紙と向き合うこと

二年生、アドバタイジング初授業。

アドバタイジングとは、

個人により、様々なメディアを通して公的なメッセージを伝達する手法。 広告を出すことを一般的にアドバタイジングという。

Wikipedia


一限の授業が始まって三十五分後
「あなた達メモを取らなくて、それでもクリエターなの?」 クリエイターね〜と思いつつ、祖父母と同い年くらいの非常勤講師の言葉を、頭の中で繰り返していた。


その言葉を聴いてクラスにシャーペンと紙を取り出す音が響き渡る。

クラス全体がメモを取っていなかったのは説教じみた授業内容だったからだろう。


東大生はこんな難しい漢字も知っていた

この有名な本を
このクラス誰一人もわからないのか

自主的に勉強していないから
漢字が読めないんだぞ

さっさと帰らず本屋に行ってください


ダラダラ話し続けた。
核心はついているものの、授業とは関係ない。全く関係ない。私たちはメモを取る気にはならなかった。



「沢山のメモを集めて授業を構成しているんだよ」



その沢山のメモはクリアファイルに入っている。その透明なファイル越しにメモを見て、淡々と講師は講義を進める。


____サッ…
ファイルから薬の袋とメモ紙が落ちてきた。


講師は落ちたメモ紙に気づかず、真っ白な靴で踏んでいる。下を向いてもメモ紙は視野に入っていない。薬袋とメモ紙は真っ白な靴によって、黒く汚れていった。


二限目の授業内容は [デザインとは] 講師が実際にあったクライアントとのやり取りを話始めた。


「知り合いのダンサーと食事に行った時に、スタジオの口ゴを任されたんだよ。『デザインは全て任せます!作りたいように作ってください!』そんな風に言われて困ったんだよね〜⋯⋯。そんなんデザインとは言えない。会社を儲けさせるため、利益の追求につなげるのがデザインなんだよ。なんの考えも無いクライアントだったけど色々聞き出すために、メモを取ろうと思ったけど、メモをとるものがなくてさ。店員にペン借りて、箸を置いてた汚れた紙に書いたんだよね」


そのダンススタジオはどこを目指すのか。ライバルは誰なのか。こだわり・強みはなんなのか、様々なことを聞き出したそうだ。



説教じみた言葉の背景には、強く伝えたいものがあったのだろう。



黒く汚れたメモ紙と講師を重ねていた。

未熟なデザイナーがクライアントに対して・自分に対して葛藤する。そして道に迷ったものの、迷ったことに気づかない。


講師は落ちたメモ紙に気づかず、真っ白な靴で踏んでいる。下を向いてもメモ紙は視野に入っていない。薬袋とメモ紙は真っ白な靴によって、黒く汚れていった。


授業の終わり、講師は落ちたものに気がついた。

「よっこいしょ」

手で汚れを払い、黒く汚れたメモは元の白紙に戻っていった。




迷ったこと(汚れ)に気が付い時、

新たな発見(また白くなるきっかけ)ができ、

デザインの可能性を広げる。


デザイナーは汚れた紙を白くできた時、デザインと向き合えたことになるだろう。

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