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青春が、耳にざらり。

 毎年、秋はエルレの「The Autumn Song」を聴くのにぴったりの夜を探っている間に終わってしまう。去年の冬に奮発して購入したショートダウンに、アニエスべーのマフラーを巻いて慌ただしく歩いていると身体がほてってくる、冬のはじめ。

 秋のはじめ、私は「アナログレコード」にはまった。きっかけは思い切って、レコードプレイヤーを購入したこと。そこから私は怒涛の勢いでレコード屋巡りにはまり、仕事終わりに都内の行ったことのないレコード屋に足を運び、隙間時間はyoutubeやapplemusicでディグる日々。休みの日はレコードを1枚選び、回しながら読書‥もちろん手には大好きなコーヒー。控えめに言って、幸せすぎちゃう。そんな秋のさかり。

 そして冬のはじめ、私が購入したのはなんと「カセットプレーヤー」なのである。お恥ずかしながら、カセットを再生する機械を購入したのは人生で初めて。中目黒のレコード屋さんに行ったら、カセット音源がずらりと陳列されていて、そのレトロポップな見た目とどんな音がするのか気になってしまい‥記念するべき初めて購入したカセット音源は、高校生のころ大好きだった銀杏BOYSの「DOOR」。

 プレーヤーは、表参道のビームスレコーズで購入した。カセットにもレコードのようにA面・B面があることすら初めて知った私。最初はボタンを押すのにもおっかなびっくりだったけど、今ではすっかり慣れて、CHAIの「WINK」も買い足しました。
 音質は、(イヤホンがちゃっちいからかもしれないけれど)はっきり言って、良くはない。でも私はこの、耳にざらりとくるカセットの音の雰囲気がとてもすきだ。うっとりと聴きながら、何かに似ているような気がしていて、今この記事を書きながら思い当たった。「ライブハウスの思い出」に似ているのだ。
 学生時代に通ったライブハウスのアンプから聞こえるあのざらりとした音にすごく似ている。そのころの私は会う予定だった友達から断られた夜に、1人でふらりとライブハウスに通ったものだ。心に残ったら、物販でCDを買って(サインを入れてもらったりした)家に帰ってから聴いたり、ウォークマンやIpodに入れた時ぜったい「名称不明のアーティスト」として登録されてしまうから困ったものだった。あの音に似ている。ああ、書きながらエモすぎて動けなくなりそうだ。タワレコで商品化されたCDを買いに行った時、同じCDを買っている人がいた時の親近感。ライブハウスのキャパがどんどん大きくなっていって、どんどん音質がクリアになっていった大好きなバンドたち。懐かしい。懐かしすぎる。

 今ではすっかりサブスクの音楽をiphoneで聴いていることが多いけど、私の青春時代はざらりとしたあの音質にある。カセットテープもレコードも、大人になるまで聴いたことはなかったけれど、音楽が流れる前に聞こえる機械の音が広がると、胸がじんわりあたたかくなるのだ。来年の冬は、何にハマるだろう?あの頃のように夢中になるほど好きなバンドにはもう出会えていないけど、私は自宅で幸せです。

 追伸。カセットで聴きながら「峯田くんって、こんな少女みたいな声だったかな」と違和感が拭えなかったのですが、なんだか早回しで再生されてしまっているみたいだ。でも、何故だろう。原因も直し方もわからない。私のプレーヤーはまだ少女の声で「援助交際〜〜」と叫んでいる。気長に使い方を覚えます‥

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