ep29.愛憎
付かず離れず微妙な距離を保ちながら、麻奈と蟹蔵はブログを続けていた。しかし、世間のバッシングが無視できないレベルになると、蟹蔵は「麻奈ちゃんとは何もないよ」と控えめに関係を否定した。
2人の恋の行方はアクセスアップの重要なコンテンツ。ハッキリとは否定できず、2人して濁しつつも匂わせ続ける。麻奈が勘違いして、期待してしまっても無理はない。
麻莉が亡くなってから仕事に身が入らず、麻奈のタレント業は開店休業状態。ブログ報酬が収入の柱だから、蟹蔵の言いつけを守りながら写真係を続けるしかない。入学式に出席したり送り迎えしたりと、伯母としての関わり合いでもある。
麻莉の忘れ形見である2人の子供たちは、子供のいない麻奈にとっても愛すべき存在だった。麻奈の生活と精神の安定は完全に、蟹蔵家族に依存していた。
麻奈は蟹蔵家族に依存していたが、蟹蔵は別に麻奈に依存はしていない。これは麻奈と麻莉の関係もそうで、麻奈は麻莉に依存していたが、麻莉は麻奈に依存することはなかった。麻奈の注ぐ愛情というのは結局のところ全て自分のためだから、いつも一方的な依存となりがちだ。
麻奈は2人の子供の世話をしたと自負しているが、一緒に遊んだり送り迎えしたりというのは子育てでいうと最も楽な部類の仕事だ。麻奈が世話を続けられたのはブログのおかげもあるが、責任感のない関わり合いだからということが要因として大きい。子供のいない麻奈は理解できないだろうが、子育てとはそんなに甘いものでも楽なものでもない。
麻奈はブログのために子供たちを必要としたから、やらなくて良いことをやってアピールする。麻莉の看病のときもそうだったが、全ては「誰かのために働く私」をアピールしたかったに過ぎず、つまりそれはブログのためと断言できる。
そういう打算的な言動というのはすべからく見透かされるもんで、世間はしっかりと見透かして麻奈の好感度は右肩下がり。麻奈は「どうしてなのよ!」と世間への反発を強めたに違いない。自分に甘く客観的な視点が欠如しているのは、麻奈の悪癖だ。
もしこの時期に蟹蔵がプロポーズしていれば、麻奈は受け入れていただろう。自分の腹を痛めず子供の母親となり、苦労のないセレブ生活ができ、ブログのネタにも困らない。
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ポンズケースケの考察日記
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