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野球の守備指標の変遷〜UZRという指標の凄さ〜

最近の野球はいろんな指標が出てきて選手の評価が多角化してきています。以前は打撃では、打率、HR、打点の3部門が評価の軸だったのに今となっては、打率は出塁率の方が大事だと言われ、HRより長打率を重視する人も増え、打点に関してはもはや選手の評価軸として扱われていないと感じることすらあります。セイバーメトリクスは世の野球観を大きく変えたなと心から思います。そんなセイバーメトリクスの影響を一番大きく受けているのが守備なのではないかなと個人的には思っています。素人目に見ていると守備が上手い=派手なプレーをしているというイメージでした。しかし今日では、捕球した打球の傾向なども含め総合的に守備能力を図ることができるようになっています。UZRという指標ではその選手がいかにダブルプレーを取ったかまで評価されているそうです。評価の基準が以前に比べて格段に多くなり、何より定性的だったものが定量的になったのですから、それだけ大きく評価の基準が変わってくるのでしょう。しかしながら、OPSなどに代表される打撃指標と比較して浸透していないなというのが個人的な感想ですし、何より自分もその指標の見方、それぞれの違いがよくわかっていないです。なので守備指標についてまとめてみようというのがこの記事になります。


主要な守備指標の変遷について

守備指標を調べているとそれぞれが以前存在していた指標の欠点を補うように成立してきたのだなと感じました。なので、流れも含めて指標を紹介していきたいなと思います。

1.守備率

守備の指標として最も一般的なのは守備率でしょう。算出の方法も極めて簡単で守備機会に対してエラーをしなかった割合を計算するだけで求めることができます。守備の確実性を一定測ることのできる指標だということができるでしょう。しかしながら守備における非常に重要な要素である守備範囲が評価されていないということが大きな問題とされ異なる指標が生まれていきます。

2.Range Factor (RF) 

RFは9イニングの間にその選手がいくつのアウトを取るかということを求めた指標です。求め方もわかりやすく、(刺殺数+捕殺数)÷守備イニング×9で計算することができます。1イニングごとの刺殺数、捕殺数を求めた上で9をかけることで1試合出場した時のアウトへの関与数を求めることができるということですね。アウトに多く関与する=守備範囲が広いと考えることができますから、RFは守備範囲を簡易的に評価することができる指標ということができます。しかしRFだけでは評価できない部分が多くあります。例えば、奪三振数が多いチームにいる選手は守備機会が少なくなります。他の選手の守備が下手なチームにいる選手は、それだけ守備機会が多くなっていきます。つまりチームごとの特性が評価に含まれていないわけです。そこに目を向けたのが次に紹介をするRRFです。

3.Relative Range Factor(RRF)

Relative=相対的なRFという意味になるこの指標は、①「奪三振数による守備機会の増減」②「チームの守備力による相対的な守備機会の増減」③「ゴロ、フライなどのアウト傾向による守備位置ごとの守備機会の増減」④「投手の左右(に起因する対戦打者の左右の割合)に基づく打球方向の差異による守備機会の増減」の4点を考慮することによって、チームを横断した上での相対的なその選手の守備範囲の広さを測ることができる指標になっています。RRFによって、ある程度の正確性を持った上で他チームの選手と守備能力の違いを求めることができるようになりましたというわけです。しかし、守備位置の真正面の打球をアウトにするのと守備位置から遠い打球をアウトにすることは同等な価値なのでしょうか。RRFでは処理をした打球の分布までは考慮に入れていませんでした。そして、その点を考慮に入れた指標が出てきます。それがZRです。

4.Zone Rating(ZR)

ZRでは、一般的な守備範囲を「その地点に打球が飛んできた際に、50%以上の確率で守備できる範囲」として設定し、受け持ちのゾーンとして設定した。その上で、ZR=(受け持ちのゾーンの打球処理数+ゾーン外での処理数)/受け持ちのゾーンの打球総数と計算をすることによって、難易度の高い打球を処理したことに対して評価が得られるようにしました。しかし、この指標では受け持ちのゾーン内に難易度の高い打球が多く飛んできた場合に低い評価をされることになってしまいます。そこで打球の質まで含めて守備の評価をしたのが、今日最も総合的に守備能力を評価することができるとされているUZRです。

5.Ultimate Zone Rating(UZR)

ZRでは、打球の質まで考慮して計算が行われていないということが問題点になっていました。そこで、UZRでは、打球ごとの難易度を評価の基準に加えました。打球の属性(ゴロなのかライナーなのか。強い打球なのか弱い打球なのかなど)に加え、打球の飛んだ場所が長打になりやすいコースなのかということまで。打球一つで考えられる可能性を網羅的に考え、それぞれの打球一つ一つに価値をつけています。このように守備範囲を評価した上で、「失策の多さによる守備得点の増減」、「併殺への貢献による守備得点の増減」、「送球による守備得点の増減」の3項目を加えた4項目で選手の守備を評価しています。つまり、これまでは、守備範囲ということに特化した指標だったものから、UZRになり肩の強さなども加えたより総合的な指標に進化したということができるわけです。

まとめ

ここまで守備指標の変遷を見てきて、今日一番使われているUZRの本質に触れました。その上で抱いた感想は、これ以上に完成された指標はないのではないかということです。しかし今日のシフトを用いた守備の浸透により、UZRでの評価に限界が訪れているという話も聞きます。

最初はどれだけエラーをしないかということから始まった守備指標。守備範囲の広さを求めること、難しい打球を処理することに価値を見出すこと、そして打球の処理だけでなく、送球なども含めたより総合的な指標になること、というように段階を踏んで進化をしてきました。きっとシフトも含めた守備の評価の方法も近いうちに現れてくるのでしょう。例えばその選手の初期位置から捕球地点までの距離を評価の基準に加えるとか。

野球が進化するように指標も進化をしているんだなということがよくわかりとても面白かったです。

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