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夫婦がともに最高の裏方になるために。

テレビでも映画でも、ドキュメンタリーが好きなんです。

今回みたのはこちら。恵比寿ガーデンシネマで絶賛公開中の「RGB 最強の85才」です。

85才にして現役、職業・最高裁判所判事。私たちが知っているアメリカからは考えられないくらい性差別が満映していた時代に、弁護士として数多くの差別に苦しむ人々の言葉を代弁し社会を変えてきた彼女。史上2人目となるアメリカ最高裁判事に指名されてからも、アメリカの法のもとに、あらゆる差別に対し「NO!」を突きつけてきた。

85歳になった今でも、「法のもとの平等」のために切り込んでいく彼女の姿を見て思い出したのはただ一人。先日亡くなったロッケンローラーとその奥様。内田裕也と樹木希林を足して弁護士にしたような、最強さ。日本におけるこのご夫婦同様、アメリカでRGBは若者を中心に絶大なる人気を誇るそうです。

予告を見てよっぽど強い女性なのかと思っていたのですが、劇中で彼女を知る人は口を揃えて「彼女はとってもシャイ」と言います。たしかに、その発言はとても思慮深く己が前に出たいというタイプではなさそう。映画の予告で見ていた屈強なイメージは、あくまでWEB上で愛を込めて揶揄されたもの。本当の彼女はそうじゃない。ドキュメンリーの中でも繰り返し言われたことでした。

では、そんな彼女がなぜここまでの地位を築いたのか。

彼女は自分の人生で一番ラッキーだったことは、夫に出会ったことだと言います。

学生時代に出会ったという彼女の夫は同じ弁護士として働きながら、3人の子供たちの食事を作り、日々穏やかに彼女を励まし支えながら、彼女を最高裁判事にするためにあれこれ手を回し、彼女の昇進に合わせて仕事を辞めて引越しをして。まるで優秀なファーストレディのような動きです。

なぜ彼がそこまで彼女に尽くせたのか。彼女がいうことにゃ……

彼は自分に自信があったから。

実際、彼はとても優秀な弁護士だったそうです。そして冗談が好きな彼が、市民に取り囲まれた人気者のRBGの隣で微笑んで囁いたのは「僕だって優秀なtax lawyerだぞ」という言葉。

tax lawyer。単なるロイヤーではなく、タックスロイヤー。税金専門の弁護士かしら。訴訟社会のアメリカでは、きっと弁護士にも色々種類があることが想像できるので、そういう言い方が単純に普通なのかもしれませんが、これは同じ弁護士として頂点に上り詰めた妻とは一線を画して、自分は自分で仕事に誇りを持つために仕事人として、弁護士として、自ら選んだアイデンティティなんだろうな、と。

私はできることは何でもしますよ?スタンスのふんわりワーカーなので「肩書き」というものはあまり信じていないのですが、なるほど、こういう作用をもたらす肩書きってのはいいなと思いました。

きっと彼は自身で限定した世界の中でとても信頼されていて、満足していた。自分に自信があるからこそ、妻がどこまでも昇っていくことにためらいがなかった。むしろ誇りに思っていた。

ものすごく低い次元ではあるけれど、私も思い出すことがありました。出産を経て思うように仕事ができず、どんどん自分の仕事に自信を失っていった頃、私は夫によく「あなたは私のことをバカにしている。」といっていました。本気でそう思っていました。夫は何も変わってないのに。夫はいつも「はい???」と戸惑っていました。

自分に自信がないって、全てを破壊する。もし誰かを支えたいのならば、まず自分に自信をもたないといけない。そして支えてほしい人には、自信を持ってもらわないといけない。自分が自信を持つために隣の人の自信を育てないといけない。自分をケアして相手をケアしてその繰り返し。

そんな夫婦の、人とのバランスを学んだ映画でした。

このRBGを題材にまた別の映画も公開になるそう。そりゃ楽しみだ。わくわく。

そうそう、最後に余談ですが、数十年前にアメリカの裁判でRBGが差別だ、憲法違反だと勝ち取ってきたような様々なできごとが今日の日本ではふつうにまだまだあるなーってのも注目ポイント。

#me too を始め、性差別に対して敏感に声を上げるひとたちをどこかで人ごとのようにみていた私ですが、たとえRBGがどんなに素晴らしい弁護士だったとしても、そもそもに訴えを起こす人がいなければ彼女が戦うこともなかった。誰もが当たり前に思っていた出来事に、先陣切っておかしい!と声をあげる人の尊さも感じたのでした。

第91回アカデミー賞<2部門>ノミネート!一人の女性が、アメリカを変えた。1933年ニューヨーク、ブルックリンで生まれたルース・ベイダー・ギンズバーグ。弁護士時代から一貫して女性やマイノリティの権利発展に努めてきた彼女は、1993年にビル・クリントン大統領に女性として史上2人目となるアメリカ最高裁判事に指名される。以降も男子大学の女性排除、男女の賃金差別、投票法の撤廃などに、弁護士時代と変わらぬ視点から、法の下の平等の実現に向けて果敢に切り込んでいく。若者を中心に絶大な支持を得るポップ・カルチャー・アイコン“RBG”はいかにして誕生したのか?家族、友人、同僚らが母として、友人として、働く女性としてのルースの知られざる素顔を語り、彼女を支え続けた夫マーティンとの愛溢れるエピソードも描かれるドキュメンタリー。(YouTubeより)


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