コロナ&オミクロン禍で結婚式を諦めた花嫁の痛み

この文章はコロナに翻弄され、結婚式を延期し、中止を検討した花嫁が書く文章です。

「コロナ禍で結婚式をやるなんて」という内容の記事がたくさん溢れる世の中、その主張は真っ当ですが、私はもっと花嫁に寄り添う文章があっても良いと思います。

誰も悪くない、誰も責められない、でも苦しく悲しい、そんな気持ちを抱えた花嫁さんがいらっしゃいましたら、ぜひ読んでいただきたいです。せめて痛みを共有できればと思います。

はじめに

2020~2021年はコロナの時代でしたね。年が明けて2022年になり、年明け早々にコロナの変異株であるオミクロン株の感染者が急増しました。

私は2020年に結婚し、2021年の挙式をコロナのために1年延期し、2022年1月に挙式予定でしたが、オミクロン株の流行により、中止を考えた花嫁です。最終的には対策を徹底した上で実施する方向になりましたが、一度は中止を決断したからこそ、この絶望は経験者にしかわからないと強く感じました。だからこそ、同じ経験者に向けてこの文章を残します。

経験者でない方も、小説のように感情移入して読んでいただければ幸いです。周りの人が同じ悩みに直面したとき、幾分か気持ちを理解してあげやすくなると思います。新郎様にも読んでいただけると嬉しいです。

準備から中止を決断するまでの話

結婚式っていざ準備をし始めると面倒くさいことの方が多いですよね。ウェディング会社を選んだり、式場を選んだり、準備の最初の段階はひたすら見積書とにらめっこ。日程が近づいて、招待状や席次表を注文するときには、ゲストの名前を一文字でも間違っていたらとても失礼だし…と何度もチェック。結婚式の準備って夫婦でキャッキャ言いながらやるものだと思っていましたが、案外、神経質にならないとできないものです。

そして、花嫁がこだわる部分といえば見た目です。衣装選び・髪型・髪飾り・メイク・ネイル、などなど。美容やファッションが好きな方からすると憧れや夢を一気に叶えられるタイミングかもしれませんね。

私は美容やファッションへの関心が薄いタイプですが、「結婚式 和装」「花嫁 髪型」「花嫁 ネイル」などで検索して、なりたいイメージを何日もかけて固めていきました。頭の中に常に結婚式のことがあって、どうすれば自分が可愛くなれるのかをずっと考えているような状態。可愛くなることがゲストへのおもてなしになるような気がして、いつもの自分みたいに適当でいいやとは思えませんでした。

そして、この文章を書いている今は挙式1週間前です。つい数日前に美容院に行ってきて、挙式のときにちょうど良く色が抜けて綺麗になるようにカラーリングしてもらいました。ブリーチをしてハイライトを入れてもらったので、美容院に居た時間は3時間ぐらい。美容院の帰りに100均に寄って、ウェルカムスペースの飾りに使えそうなものを買い、夫に髪色を見せたくて、ルンルンで家に帰りました。

しかし、ここからが絶望の始まりでした。

家に着いたとき、夫の元に親戚から電話があり、内容は「オミクロン株が流行ってきているので結婚式を欠席したい」というものでした。私よりも慎重な考えをもつ夫はこの連絡を重く受け止めて、結婚式の中止を考え始めました。

「ほかのゲストも言いづらいだけで、来たくないと思っているのかもしれない」「職場の人は楽しみだねと声をかけてくれるけど、内心では非常識なやつだと思っているのかもしれない」「ゲストにも生活がある、感染しなくても濃厚接触者になって働けなくなったら、それが仕事に響く人もいる」…

旦那の主張を聞けば聞くほど、それが正しいとしか思えませんでした。非難されるとしたら結婚式をやって、よくない状況になってしまったときです。延期や中止をしたときには非難されないでしょう。つまり延期や中止の判断が圧倒的常識であり圧倒的正義だということ。

「ああ、無理なんだな」と思いました。「挙式1週間前なのに今更?」「ゲストだって美容院や衣装の準備をしてる」「このタイミングで中止したらキャンセル料は全額負担」…最初に出てきた感情はこの3つでした。

でも、「命よりも大切なものはない」と思えば、どんな感情も無駄に思えました。これは感情論ではなく、理性的に判断して諦めなければならない問題なのだと思いました。私が準備してきたことも楽しみにしていた気持ちも、なにもかもが無駄だったのだと悟りました。悟るしかありませんでした。

結婚式の中止を決断した後の話

夫が出かけ、一人になると一気に虚しさに襲われました。ゆるく巻いてもらった毛先を眺めながら、こんなはずじゃなかったのになぁと思ったら、涙が出てきました。美容師さんの顔も浮かびました。3時間つきっきりでカラーリングしてくれて、最後に「こういう髪色にすると本当に似合うっていうか、かっ、かわいいですね」って言ってくれた美容師さん。美容師にありがちなスラスラと誉め言葉が出るようなタイプの人じゃなくて、寡黙な人で、あまりおしゃべりはしなかったけど、最後だけ言葉に詰まりながらかわいいと言ってくれたのが、とても嬉しくて。

見積書とにらめっこした面倒くさい準備が無駄になったこととか、キャンセル料が全額負担なことではなく、髪型のことで自分が泣いたのが、自分で驚きでした。美容もファッションもどうでもいいと思って生きてきた自分が、こんなにもショックを受けるなんて思いもしませんでした。

わからないなりにいろいろと調べて、こうやったら可愛くなれるのかもしれないという像が見えてきて、きっとわくわくし始めていたんだと思います。美容が楽しくなりはじめていたのだと思います。自分の見た目のことをこんなに考えたことがなかったし、この日に一番かわいい状態にしたい!なんて思いながら目指した日も、今まで特にありませんでした。

将来の夢は?と聞かれて、「お嫁さん」と答える幼稚園児がたまにいますよね。幼稚園児であれば、好きな人と一緒に暮らすというところまで想像しておらず、ウェディングドレスを着て綺麗に笑う女性、あれになりたい、ぐらいの認識な気がします。小さい頃からこういう感覚を持って育った女性の花嫁に対する憧れの強さ、思いの強さは男性には理解しづらいと思います。

コロナによる結婚式の中止を夫婦で議論するとき、「正しいかどうか」だけの指標で考えると、この花嫁の気持ちはいとも簡単に切り捨てられてしまうでしょう。「正しいかどうか」ではなく、花嫁の感情まで汲み取った話し合いができているのか。この日の私は、「正しいかどうか」という壁の前に立ち尽くし、夫に自分の感情を上手く伝えられませんでした。わがままを言ってはいけないと思いました。

それから、「親に結婚式を見せられない」こともとてもショックでした。感謝の気持ちはいつでも伝えられるけれど、私はゲストが見守るなかで伝えたかったのです。賞状が郵送で届くのと、全校集会のときに校長先生に呼び出されて、みんなの前で受け取るのとは全然違いますよね。両親にそういう場を与えられるのは結婚式しかないような気がします。この機会を逃せば、もう機会はないと思ったら、悔しくて仕方ありませんでした。

このタイミングで、母親から「結婚式で使うカメラどれにしよっかな?!」みたいなLINEがポンッと届いて。だめだ、と思いました。こんなに楽しみにしてくれていて、挙式1週間前で、中止なんて言えない。なんの巡り合わせなのか、友達から結婚式の集合時間を確認するLINEが届いて。1週間前だもんね、ソワソワしてくれてるんだよねって思ったらまた悲しくなってきて。

花嫁への憧れや家族への思い。これが私と夫では全く違うと思いました。大好きで大切な人ですが、夫の苦しみと私の苦しみは同じではないのだとわかったとき、言いようのない孤独を感じました。誰かにわかってほしくて、ひとつのツイートだけをして家を出て夜道を散歩しました。

そのときのツイートはこちらです。

少し歩いてスマホを見たら、このツイートにたくさんの反応がきていて、私の悲しみをわかろうとしてくれている人たちの存在がありました。ああ、ひとりじゃなかったなと思いました。同じような苦しみを知っている女性たち、経験していなくても、それを想像してくれる人たちがいました。

苦しんでいる花嫁さんに伝えたいこと

この文章がひとりで泣いている花嫁さんに届いてほしいです。あなたは一人じゃないし、その感情はただのわがままではなく、尊重するべき感情です。理解のない言葉を投げられることもあるかもしれませんが、わかろうとしてくれる人もいます。同じように痛んでくれる人もいます。わかってくれないだろうと思った夫も、もう一度、気持ちを整理して、感情を言葉にしてきちんと伝えれば、わかろうとしてくれるかもしれません。

結婚式の中止は正義なので、その決断は素晴らしいと思います。ただ、花嫁が大きな感情を一人で必死に押し殺している状態の中止と、夫婦で感情を共有し合ったうえでの中止は全く違うと思います。花嫁さんの感情を結婚式というかたちで表現できなくなったとしても、その感情を捨ててしまうのではなく、せめて夫婦で大切にできたら、と思います。捨てなくてはいけない感情ではない、と私は思います。

このような考えから、私はもう一度、夫と話し合いをしました。夫婦といえども、抱えている感情や熱量は同じではないということをはっきり伝え、その上で私の感情を言葉にしました。夫は自分と私では準備にかけてきた時間も違うし、家族との関係性も違うということを口にして、僕たちは同じ感情じゃないね、と認めた上で、「結婚式をやろう」と言ってくれました。正しい判断なのかといえば間違いかもしれませんが、私は、私の感情を受け止めてくれたことが何よりも嬉しかったです。

ただ、コロナへの不安は拭えないままです。ゲストやプランナーさんと対話を重ね、マスク会食やアクリル板の設置など対策を徹底して、実施するという方向で今、進んでいます。

自分の感情を言葉にするのが苦手な方は、この文章をぜひ使ってください。この文章のこの部分と私は同じ気持ちなんだよ、と伝えてもらえれば、夫婦間でうまく気持ちが伝わるかもしれません。もしも、夫に受け止めてもらえず、感情を捨てるしかなくなったら、私のSNSまでご連絡ください。私があなたの感情を受け止めます。

今の世間の目は厳しいですが、花嫁さんの悲しい気持ちや、結婚式をやりたいと思う気持ちは決して悪いものではありません。開催するかどうかはさておき、感情まで殺すことはありません。とっても素敵な感情のはずです。どうか大切にしてください。

まとめ

ここまで読んでいただきありがとうございました。伝えたいことは本文内でほとんどお伝えしましたので、結婚式を非常識だと思う人に対してひとつだけ。「なぜこの時期にやるのか?」と言われることがありますが、夫婦それぞれの事情があります。

仕事はいつまで続けたいか、子どもはいつ生みたいか、親や祖父母の健康状態はどうか、いろいろな要素を考えながら計画をたて、結婚はこのタイミングで、結婚式はこのタイミングで、と決めていきます。コロナの流行とは関係なく年齢は進み、出会いがあり、転機が訪れ、いろいろなことが起こります。すべてのタイミングをうまく合わせてコロナを避けることなど不可能です。こんな時代だからこそ、どうか想像力を持ってほしいです。

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