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はじめてのひとり旅in京都

人生ではじめて、ひとりだけで旅に出たのは京都だった。
22歳くらいのころだったとおもう。1月のさむい時期で、ちょうど自分の誕生日の数日前だった。
北海道生まれ・北海道育ちのわたしは、古い歴史を感じられるであろう京都に憧れていた。

もうすっかりむかしのことなのでどこを観光したかうろ覚えだけれど、泊まった宿のことはよく覚えている。
当時はまだゲストハウスやホステルがメジャーではなく(あったのかもしれないけれど)、母親に「安いし、いろんな人に出会えて楽しいよ」とおすすめしてもらったユースホステルに宿泊することを選んだ。

ユースホステルは、若者の旅に安全かつ安価な宿泊場所を提供するために生まれたドイツ発の宿泊施設。
ユースホステル協会に年会費を払うことで、全世界にあるユースホステルを安価で利用することができる。

京都にはユースホステルが当時2ヶ所あり、その片方の宇多野というところに宿泊した(現在はもう片方はなく、宇多野のみ)。

できたばかりらしく施設はとてもひろびろとしていて清潔だった。
2段ベッドがふたつの4人部屋。わたしがチェックインすると、他の宿泊客はもうひとりだけ。わたしの、母くらいの年齢の女性だった。

どこから来たかとか、家族構成とか、きょうはどこを観光したとか。
自分には誕生日が一緒の曽祖母がいて、あと数日でふたりとも誕生日を迎えること、など。わたしからはそんな話をして、その日は眠りについた。
自分の母くらいの年齢の女性がひとり旅をするなんて、とてもかっこいいなと感動したのをよく覚えている。

次の日はお互い朝早くから観光に出かけた。
暗くなってから部屋に戻ると、母くらいの年齢の女性が「おかえりなさい」と迎えてくれた。

そして、小さな袋を渡してくれた。
「あなたと、あなたのひいおばあちゃんに、誕生日プレゼント」と言って。
まさか、昨日初めて会ったばかりのわたしに、わたしが曽祖母といっしょに数日後に誕生日を迎える話をおぼえていて贈り物をしてくれるだなんて…。
心がぶわっと熱くなった。
うれしくて急いで中身を見てみると、ちいさな筒型のおひなさまが入っていた。いまでも宝物のおひなさまと、思い出。

わたしが旅先で出会った人と関わることがすきなのは、まちがいなくこの出来事があったから。
わたしも旅で出会ったひとにこうやって笑顔ややさしさを向けられるひとになりたいな、とおもうきっかけになったひと。
つぎの旅で出会うであろうまだ顔もしらないだれかに、やさしさを紡いでいきたいし、そんな旅がまたできますように。

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