さあ歩き始めよう
雨も雪も上がって美しい朝になった。
山は雪化粧。
気温は低いが寒さは感じない。
大気のエネルギーが豊かになっている。
もうすぐ春分なのだ。
新しいマシンについた傷を眺め、ちょっとブルーな気分に浸っていたが、ちょっと思い直した。
これから何年間も使い続ける間に、傷はついて、どんどん増えてゆく。
それは自明だ。
たくさんつく傷のうち、最初についた傷、ということだ。
傷がつかない美しいままの筐体に囚われていると、マシンの能力を発揮させないまま過ごしてしまうことになる。
傷がつくことは、そのマシンを使って何かをした証でもある。
このマシンで未来へ行こう、と思ったのだから、傷がいっぱいつくことを悲しんでいてはいけない。
未来へゆきましょう。
マシンについた傷が、ただ傷つけた傷ではなくて、未来へ行こうと人生を歩いた証になるように。
藪を歩けば熊笹の葉で傷はつくし、森を歩けば木の枝で傷はつくし、岩場を歩けば石や砂で傷はつく。
そういうものだ。
マシンについた傷が、そうして歩いたことを証明するものになるように。
さあ、歩き始めよう。
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