何のために生きている?
風呂の中で、また、昔のことを考えていた。
会社に入ってから数年間。
あの頃、僕は既に分裂していた。
「こうありたい」という自分は、自分の、奥の方に押し込められていた。
押し込められた自分は、いつも、「出たい」、と叫んで、空を破ろうとしていた。
もうひとりの僕は、その殻をより一層強固にして、絶対に破られないものにしていた。
当時、好きだった女性とは、うまくいきそうになったのだけれど、意図的に冷たい態度をとって、自分を嫌うように仕向け、そうして、首尾よく嫌われた。そして、いまでも忘れられない。
会社の仕事をしていて、押し込められた自分は、「なんでこんなことをしているんだ」「実力がもっとも発揮できる年齢なのに、それができない」と、常に思い、殻を作っている自分は、「社会のために、みんなのために、がんばろう」と、常に思っていた。
そして、いつも死にたいと思っていた。
石川啄木が死んだ29歳で死ぬ予定だったが、死ななかった。
宮沢賢治が死んだ37歳で死ぬ予定だったが、死ななかった。
いつも、会社のビルの屋上から、地上に飛び降りるイメージ・トレーニングをしていたが、実行しなかった。
死にたい、と思いながら、死ねない、ということを繰り返すうちに、いつしか「破滅したい」と、思うようになった。
会社の中で、人事評定を壊す行動を何度もとった。
そして、めでたく、キャリアコースから転落した。
その後、冷や飯を食わされ続けた事実を、親に突きつけて、会社を辞めることを正当化して、会社を辞めた。
何のために生きている?。
死ぬために生きている。
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