おっさんの図太さに憧れる
ぼくは仕事でミスをするといつもへこんでしまう。どうしたら次に生かせるかを考えるときもあれば、ただただ落ち込んでしまうときもある。ときには悔しい気持ちが先行してしまい自分に腹がたつことも。
短くても1週間はズルズルしてしまう軟弱なメンタルの持ち主だ。
ぼくの職場は職人ばかりである。みんな会社に勤めていない一人親方としてやってきている人たちだ。
そのなかで角刈りのヘアスタイルで50歳を超えたおじさんがいる。この道20年のベテランである。仕事はいつも丁寧で、手を抜きたくなるような場面でも決してサボったりはしない。
そんな角刈りおじさんが仕事で大きなミスをした。
「なんで?」と思えるような新人でもありえないミスである。普通ならありえない。勘違いとか不注意とかそんなレベルではない。「どこか調子でもわるいの?」とも思わせるような、ちょっと心配になってしまうレベルのミスだ。
ぼくはベテランでもそんなことが起きるんだと、なんだか安心してしまった。
優秀な人間なら決して他人事にはせず、自分事に落とし込んで自分も同じことをやらないようにしようと思うことだろう。
だけど、そんな気持ちにはならない。20年以上のベテランでもミスはあるんだな〜と、なんだか感心したようなホッとしたなような気持ちだった。まあただ性格が悪いのかもしれないけど。
そんな角刈りおじさんが次の日どんな顔でくるのかちょっと気になっていた。
朝、顔を合わせる。表情はいつも通りでとくに落ち込んだ様子はない。まあ50歳にもなれば表情に出すことはしないのかもしれない。
「おはようございます」と声を掛けた。
「おはよう、昨日はわるかったね」ミスの後始末を手伝ったためお礼をいわれたが、そこに罪の意識はないように感じる。
切り替えが早すぎる。
そして角刈りおじさんは昨晩のことを話はじめる。
「いや~、昨日遅くまでゲームしてて寝不足だよ」
マジか!このおっさん。
あれほどのミスをしておいてこのメンタル。別に責めるつもりではないけど、切り替えが早すぎないか。
まるで何事もなかったかのように、「過去は変えられない」のような名言を生み出した偉人のように、ケロッとした表情を浮かべている。
これがこの道何十年と戦ってきた男のメンタルか。
ぼくのようにいつまでも引きずって、ドキドキしながら次の日を迎える人間にとって衝撃だった。
はたしてぼくは、ここまで図太い人間になることはできるのだろうか。歳をかさねることで強靭なメンタルはつくられていくのだろうか。
30歳目前。大人の階段はまだまだ長いのかと感じた。以上。終わり。
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