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越前、お前はエンタメの柱になれ

リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様 を観た。


ここ最近休職したことで

なかなか気分が落ち込み、

映画館に足を運ぼうという気力が

なくなっていたのだが、

ある日友人に誘われて『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』(以下:リョ!とする)を観るに至った。


そもそもリョ!とは何なのか?


リョ!は『テニスの王子様』という、

言わずと知れた超次元テニス漫画が原作である。

『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載。1998年41号掲載の読切を経て、1999年32号より連載開始。2008年14号の終了まで約9年間連載された。さらに2009年3月から第2シリーズ『新テニスの王子様』(以降『新-』)として『ジャンプスクエア』にて連載再開。通称「テニプリ」。
テニスの名門中学校に入学した主人公の越前リョーマが、テニス部に入部して、全国大会優勝を目指して団体戦で試合を勝ち上がっていくというストーリー。(以上Wikipediaより抜粋)

なのだが、

本作では主人公リョーマと

同級生である竜崎桜乃が、

何故かタイムスリップをし、

リョーマの父親の現役時代で、

父親の現役引退試合についての謎を解決していくというストーリーだ。


『テニスの王子様』(以下:テニプリとする)

という作品の魅力は幾多とあるが、

今回最も感じたのは


何故かよく分からないけど、見たらなんか元気になった。


という要素である。


ポイントその1:何故か冒頭からキャラクター全員が歌って踊っている


今作リョ!は、フル3DCGで制作されている。

作品の始まりは、原作で全国大会編と呼ばれる部分のラストから始まる。

主人公越前リョーマは対戦相手である

立海大付属の幸村精市に苦戦し、

コートに膝をつき、汗を流し、肩で呼吸をし、

幸村にどう応戦すべきか模索している。

そんな最中突然視界が開け光明が差したように、

テニプリ界では親しまれている名曲

「Dear Prince ~テニスの王子様達へ~」

が流れる。

そしてリョーマが幸村との対戦に

勝機を見出したように、

一気に明るくなったテニスコートで

キャラクターたちが歌って踊りだすのだ。

そう、全てのキャラクターが。突然に。

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控えの選手から観客席のモブキャラまで

端から端まで全員踊っている。

普段は寡黙であったり、

絶対踊らなさそうな

不良っぽいキャラクターまでもが

全員このテニプリ界の名曲で歌い、踊るのだ。

もう恐らくはこの冒頭部分で

多くの観客は思うだろう


この映画、狂っている。


原作者であり本作の指揮も務めている許斐剛氏には脱帽するが、

大真面目にこの作品を作っているのだと思うと

狂気しか感じないのである。

同じようなミュージカル狂気アニメ

(今私が命名した)として

「KING OF PRISM」が挙げられるが、

向こうは職業として歌って踊っているので

何となく分かる。

だがリョ!ないしテニプリは、

テニスなのである。あくまで。

狂っている・・・。


ポイントその2:映画なのにルート分岐がある

このリョ!には、なんと「Decide」と「Glory」という

2パターンの作品が存在する。

何がどう違うのか

端的に言うと、

電話の繋がる相手が違う


作中、マフィアの手下にリョーマたちが追われるのだが、

その最中

公衆電話でリョーマが父親に電話をする。

その際、謎の力(本当に何の力なのか分からない)が働き、

何故かタイムスリップ先と現代で電話が繋がってしまうのである。

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「Decide」ではリョーマが通う青学の部長手塚、

ライバル校である立海大付属の幸村に繋がる。

「Glory」ではライバル校である氷帝の跡部、

四天宝寺の白石に繋がる。

ちなみに先に言っておくと、

この電話のシーンももちろん

ミュージカル仕立てに歌っている。

(但し歌うのは手塚と跡部のみである)


通常、映画というものは一本で完結する。

しかしあえて、

リョ!では二択のルート分岐を用意している。

二つの分岐はどちらもパラレル時空であり

交わることはないが、

こうして二択にすることで、

二倍リョ!を楽しめると感じた。


というのも、

電話先の相手が違うというだけで

それぞれに持ち味が違ってくるからである。


手塚と幸村の出る「Decide」では

リョーマの状況をちゃんと受け止め、

手塚が冷静にアドバイスをしている。

元々手塚は

冷静で真面目なキャラクターではあったが、

テニプリを知らない人間が初見で見たとしても

比較的理解し、

受け入れられるのではないかと思う。


一方の跡部と白石の出る「Glory」だが

結論から言うと


跡部に全部持っていかれる


もうその日一日は

跡部が頭から離れない覚悟をすべきである。

後述する「テニフェスpetit」という

本編終了後の映像に関してもそうなのだが、

「Glory」ではあまりにも


跡部の圧が強すぎる


のだ。

また「Glory」で特に私が好きなシーンは、

リョーマと跡部の関係性が

手塚程良いわけではないため

仕方ない気もするのだが、

電話口で

「♪今、西暦何年すか~?」

とリョーマが問うシーン。


かつてこの世に、現在の西暦を問う歌はあっただろうか


というか、もっと何か他に問うことなかったんだろうか。

歌が盛り上がってくる部分に

「今、西暦何年すか?」という

ちょっと締まらない文言なのがまた面白い。

これもまたテニプリらしいと言えば、

らしいのかもしれない。


私の主観ではあるのだが、

テニプリ初心者の初見には「Decide」

ファンや頓智気要素をあえて楽しみたい人は「Glory」

を、おすすめしたい。


ポイントその3:本編終了後にライブがある

これはひとえにテニプリという作品の

凄いところなのだが、

テニプリと歌は、実はとても密接な関係にある。

と言うのも、


テニプリには900曲超のキャラソンが存在する 


キャラソンとはキャラクターソングのことで、

登場人物のパーソナルな部分や、

キャラクター同士の関係性などを

表現するような歌詞で、

登場人物の声優が歌った曲のことである。

先述した

「Dear Prince ~テニスの王子様達へ~」や、

「世界を敵に回しても」も、

このキャラソンにあたる。


テニスのスポーツ漫画であるテニプリでは

原作者許斐剛氏の意向もあり、

現在900曲を超える

膨大なキャラソンが存在している。

そしてそれらのキャラソンは、

「テニプリフェスタ」と呼ばれる

声優がキャラソンを歌い踊るイベントにて

ファンの間で親しまれている。


そういったテニプリの文化・歴史があり、

本作リョ!でもその文化は踏襲されている。

態々映画開始時に

「この映画の最後には

テニフェスpetitが放映されるぜ」

なんてキャラクターからのアナウンスまで入る。

客が本編終了後直ぐに席を立たぬように

という配慮なのだろう。

ちなみに私は

エンドロール中に立ち上がる観客が嫌いである。


そうして

本編終了後に放映されるテニフェスpetitでは、

主に本編に出演した

”お馴染みのキャラクター”達のキャラソンが、

原作のシーン抜粋や立ち絵の映像と共に

メドレー形式で流れる。

この時間は完全に本編とは切り離されており、

「テニフェスpetit」として成り立っているため、

例えるなら

宝塚歌劇団のレビューのような時間である。

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ここで観客、

特に日ごろからテニプリを観てきたファンは

「テニプリって、いいな」

という感情を思い出すのだ。


大好きだったあのキャラクターの曲

あの場面を思い出すこの曲

このシーンはここが好きだった


そういった感傷や興奮、感動

言わば”エモさ”を感じるのである。

そしてエモくなったファンたちは、

またこのエモさを味わうために

またリョ!に足を運んでしまうのである。


話は戻るが、私は当初気落ちしていた。

新卒で入社した会社では上手くいかず

メンタルを崩し、

親の心配の目に晒されながら

1か月程を引きこもっていた。

その矢先にこのリョ!を観て、

心の底から楽しいと感じた。

突っ込みどころが多すぎるし、

吹き出してしまうような面白いシーンもあって、

でも最後には観てよかったと感動した。


「テニプリって、いいな。」


素直にこの言葉が出てきたのだ。

リョ!のお陰で私は元気を取り戻し、

リョ!を観に行ったその足で、

池袋のアニメイトカフェへ出向き、

リョ!のコラボカフェで

推しである白石蔵ノ介君のグッズを買った。

今では、毎日テニプリのキャラソンを聞き漁り、

テニプリのアニメを観て、

テニプリのゲームをし、

テニプリの原作を全巻まとめ買いした。


これが、エンターテイメントの醍醐味ではないかと私は考える。

エンターテイメントの意味を調べると、

ビジネスにおけるエンターテイメントには幅広い解釈があるが、いずれも「人の心を魅了して離さないもの」という共通点がある。主に芸能、映画、音楽関係などを「エンタメ業界」と呼び、あくまでビジネスとして人を感動させお金をもらう、れっきとした「産業」だ (新語時事用語辞典より引用)

このように書かれているが、

人を感動させることは、なかなか難しい。

感動とは他人の心を揺さぶるような感情であり、

そういった感情は

相手の受け取り方が大きく左右する。


しかし、私のような閉ざした心に対しても

リョ!は感動を与えたのだ。

そしてその感動が原動力となり、

この先もテニプリを見たいという

生きる理由になったのである。

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最早越前リョーマは「青学の柱」に留まらず

「エンタメの柱」になった

と言っても過言ではない。

部長の手塚風に言うならばまさしく、


「越前、お前はエンタメの柱になれ」


といったところだろうか。



ありがとう、リョ!

そして、全てのテニプリにありがとう。


最後に聞いてください。

許斐剛で

「テニプリっていいな」




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