映画25 「ヤクザと家族 The Family」

綾野剛主演で1人の男の一生を描いた作品。生きづらい中でもがく姿と、家族の温かみを感じる良い作品だった。ネタバレあり。

「新聞記者」が日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた藤井道人監督が、時代の中で排除されていくヤクザたちの姿を3つの時代の価値観で描いていくオリジナル作品。これが初共演となる綾野剛と舘ひろしが、父子の契りを結んだヤクザ役を演じた。1999 年、父親を覚せい剤で失った山本賢治は、柴咲組組長・柴崎博の危機を救う。その日暮らしの生活を送り、自暴自棄になっていた山本に柴崎は手を差し伸べ、2人は父子の契りを結ぶ。2005 年、短気ながら一本気な性格の山本は、ヤクザの世界で男を上げ、さまざまな出会いと別れの中で、自分の「家族」「ファミリー」を守るためにある決断をする。2019年、14年の出所を終えた山本が直面したのは、暴対法の影響でかつての隆盛の影もなくなった柴咲組の姿だった。

「新聞記者」の監督だったのか。「新聞記者」もそこそこ面白かった気がするけど、はるかに面白かった。面白いというのもちょっとニュアンスが違う気もするけど、とにかく、良かった。

全体の構成が3つに分かれていることで、主人公「ケンぼう」の一生の移り変わりと、同時に社会の移り変わりをきれいに対照的に描かれていると感じた。

1999年。ケンぼうが無秩序に暴れまわっている時代。ツレと共に無気力な日々を過ごす。ただ父を追い込んだクスリについては苛立ちがあるよう。終始クスリに対する嫌悪感がみてとれた。

2005年。ケンぼうはあちらの世界で暮らす。そして1人の女性と出会い惹かれていく。一方で世間からの風当たりが強くなる業界は揺れはじめ、抗争が起こる。昔からのツレが倒れるシーンでの演出と綾野剛の演技が非常に印象深く、この映画で1番好きなシーンになった。あの数秒?数分のゆったりとした時間が、悲しさというか、信じられなさを醸し出していると思う。

2019年。世界が変わっていた。病に倒れる柴咲や半グレになった翼など、14年の月日はすべてを変えていた。そんな中、真っ当に生きようともがくケンぼうの姿は思わず応援したくなった。しかし、現実はそう上手くはいかず、過去に犯した罪の償いは、懲役だけでは消しきれない。最後は悲しい結末ではあるが納得のいくものであった。最後の翼のシーンもすごく良かった。

全体を通してなんとも郷愁にかられる素晴らしい作品だと思うよ。

★★★★★

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