読書記憶13「青山娼館」

珍しくミステリー以外を立て続けに読んでいる最近です。

あらすじ



「恋は御法度よ」会員制娼館のマダム塔子は言った。娘と親友を亡くす不幸のどん底から、高級娼婦という仕事に行き着いた奈月(32)。青山に佇むその旧い館には、白檀の香りと真に拮抗する男女の関係があった。身体をぶつけ合い、生の実感を取り戻す奈月は、やがてマダム塔子の過去を知ることになる―。怒りと悲しみに満ちた人生が交錯し、身体から再生していく日日を描いた全く新しい衝撃作。


仕事としての男女関係

青山の246通りから1本裏道に入って、そこからもう1本くらい入って、少し行ったところにある小道を曲がればそこには瀟洒な洋館が…
そんな光景を想像しながら読みました。
実際には、あの辺りへはあまり行かず、詳しくないのですが、なぜか目に浮かぶようで、文章が持つ魔力でしょうか!

そして友人の死をきっかけとして、その館で高級娼婦として働き出す奈月。
そこには、「身体を売らなきゃいけない…」などの悲壮感や、「もうどうにでもなれ」などのヤケは感じられなくて、ただ、生きることの痛みを淡々と受け止める奈月の姿が描かれている様に感じました。
仕事としての男女関係。
その事実を、悲壮感なく、ヤケでもなく、ただありのままに受け入れる。
その奈月の強さなのか、諦めなのかが、物語全体に漂っていて、最後までスッキリとした気持ちで読めました。

良く、「男女の友情は存在しない」等と言いますが、私は、身体の関係があろうとなかろうと、当人同士が「大事な友達だ」と思っていたら、そこには確かに友愛は存在していると思います。
でもそれは、恋人になるより容易いことではなく、奇跡の様なものかもしれないと、30年あまり生きてきて思うようになりました。

この物語の中の奈月と、「親友の元恋人」も、身体の関係はあっても、そこにあるのは確かな友情、同じ痛みを舐め合う戦友のようなものなんだろう、と。
だからこそ、ただの恋愛関係より尊くて、そして厄介なものかも知れないと思ったり思わなかったり。

男と女の何たるかを、
色々なひとと過ごした色々な夜を、
想いながら、
大人になったからこそ、楽しめる一冊でした。

ponta

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