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(ショートショート)俺は彼女のジェシーと別れる。だってジェシーは最高の女だから
俺は彼女のジェシー(本名:山田梅子)と別れる事にした。
俺はジェシーの事は大好きだ。最高の女だ。大好きだからこそジェシーと別れようと思う。
俺は呪われていた。俺の一族の男は全員ある呪いを受けていた。
その呪いとは3日に一回は何か忘れ物をしてしまうという呪いだ。
大した事が無いように聞こえるがこれが大変厄介な呪いなのだ。
俺はある日大学の受験の願書を持って行き忘れた。
午後2時45分。銀行が閉まる15分前に母ちゃんは免許を取って初めて高速以外で80キロ以上出して俺に願書を持ってきた。
またある時は大学の奨学金の手続きを忘れてた俺は成人して初めて親父にガチで怒られた。
そんな親父だが赤ん坊の俺を病院に置き忘れた。
とにかくうちの男ってのはヘマをやらかす。
エピソードを挙げていくとキリがないのでここらへんにするがこんなめちゃくちゃな男の人生にジェシーを巻き込みたくなかった。
「なあ、ジェシー俺たちお終いにしよう」
いつも待ち合わせる喫茶店でふと会話が途切れた時に俺は言った。
ジェシーは普段より深くタバコを吸い込んだ。
そしてゆっくりと時間をかけて煙を吸い出した。
俺はジェシーがタバコの煙を吐くのを見るのが好きだった。
「何で?もしかしてこの前私がエクスタシーするより暴発した事気にしてる?いいよそんなの
あんたが早撃ちマックな事くらい」
ジェシーは言った。凄く穏やかな口調だった。
「いや、そうじゃな」
い と俺が言う前にジェシーが口を開いた。
「あんたは確かに早撃ちマックだけどその分あんたのハムスターはマシンガンじゃない。ねえ、今夜はどこで種マシンガンしよっか?」
「ジェシー俺たちお終いにしよう」
俺は喫茶店を後にした。
ジェシーが追いかけてきた。
ジェシーが俺の鼻を拳を固めて殴った。俺は鼻血を出しながら尻餅をついた。
ジェシーが獲物を仕留めるライオンみたいに俺にのしかかってきた。
「あんたが世界トンチキ選手権があれば永世名人級のトンチキ野郎っていうのはあんたのクソ出す穴に生で中指突っ込んでメスアクメ覚えさせた時から私の頭蓋にプリントアウトしてあんだよ!」
ジェシーが大声で叫んだ。周りを行く人が俺をみた。
親子連れも見ていた。子供が母親に何か質問していた。母親は質問に答えず俺を犬の糞を見るような目で見てきた。
「なあ、ジェシー」
俺が何か言う前にジェシーは俺の唇を強引に奪った。
ジュルルルッ
ジュボボッ!
バキュームカーで吸われているような強引な口づけだった。
俺とジェシーの身体が布越しに密着してジェシーの体温が伝わって来た。
暖かくて気持ちよかった。
「ぶ、ブラボー ブラビアス!」
野次馬の一人が叫んだ後拍手をした。
するとパチパチと周りの皆様も拍手をしだした。やがて大きな拍手の渦に変わっていく。
「おめでとう!」
「お幸せに!」
「兄ちゃんアナに気をつけろよ!ケツだけにな!」
ジェシーが喝采に大恋愛劇のフィナーレのヒロインのように手を挙げて応えた。
あの日から3年経った。
俺はジェシーが作ってくれた持ち物リストを見ながら出勤前に忘れ物がないか確認した。
「ジェシー行ってくるよ」
「ねえ、ちょっと待って」
ジェシーはすっかりエプロンが似合うようになった。
「ねえ、あなた出来たみたい」
ジェシーはマリファナをキめた後のような幸せそうな顔で言った。
「え、でも俺たちいつもスキンアリだったし」
「ふふふ、今日みたいに確認した?」
もちろんしてない。
なあ、これを読んでるアンタ。忘れっぽいてのも悪いことじゃないかもしれねーぜ。
もしあんたにジェシーみたいな女がいればだけど。
ジェシーは今も変わらず最高の女だ。
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