酒を飲む

ウォッカを一瓶買った。
本当はラムが欲しかった。モヒートを作りたかったからだ。ラムがなかったので代わりにウォッカでモヒートを作った。

ミントと砂糖をすりつぶしてウォッカと炭酸を注ぐ。
ウォッカは瓶の中で水のように澄みわたり、40度以上の強い酒にはとても見えない。ウォッカで作ったモヒートはくせがなく飲みやすかった。

私は現在、日々在宅勤務をしている。
仕事が終わった後も、場所が変わらないので気持ちがすぐに切り替えられず息苦しいときがある。

そんなときは冷凍庫からウォッカを取り出して、オレンジジュースやアップルジュースで割って飲む。
胃がぽっと火が点ったように温まり、頭はゆるんでいく。精神が解放され始める。

私は学生時代から社会人になっても、ずっと酔うために酒を飲んでいた。
酒の味が美味しいとかは二の次で、酔うことが大事だった。

中島らもの『今夜全てのバーで』のなかに、

よく、『酒の好きな人がアル中になる』といった見方をする人がいるが、これは的を得ていない。アル中の問題は、基本的には好き嫌いの問題ではない。(中略)
アル中になるのは、酒を『道具』として考える人間だ。おれもまさにそうだった。この世からどこか別の所へ運ばれていくためのツール、薬理としてのアルコールを選んだ人間がアル中になる。


という一節がある。
高校生の時に読んだときはなんとも思わなかったのに、30歳になってから読み直してぎょっとした。これ私のことやん。私はまさに、酔うという目的のために、道具として酒を使っていた。

ある日酒を飲む前に味噌汁を飲んでみた。出汁と味噌が身体中にじわんとしみわたり、胃にぽっと、火が点ったようになった。気持ちがほっとできた。

酒じゃなくて、味噌汁でいいやん。
それからはできるだけ毎日味噌汁をつくって飲んでいる。
夏なのでなめこ、豆腐、おくらの味噌汁に茗荷を刻んでのせたりしている。至福だ。

ロックンローラーのような中島らもの生き方に憧れもする一方で、平凡な家庭の味を今は好きでいたいと思っている。

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