見出し画像

【学び】人事制度と組織風土、CHROの役割(その3)

実務経験が無いので真っ先に忘却の彼方へ行きそうな概念、CHRO。これについての学びを記述してまいります。

1.CHROって何?

Chief Human Resource Officer(最高人事責任者)。日本人には身近な人事部長とは異なります。CHROは経営者の傍らに位置していて企業の戦略に関与します。戦略実行にあたって組織をどう構築し運営していくかという責任までを持つのがCHROです。対して人事部長は決められた人事業務に関して意思決定をする立場の方なのです。経営の立場では厳密にはないのですね(兼務などは別として)。

ネットからの情報で恐縮ですが、IDC JAPANが2016年10月に実施した「国内企業の人材戦略と人事給与ソフトウェア市場動向の調査結果」によれば、CHO/CHROの設置率は10.5%程度で、41.3%の企業では人事部長が役割を兼任しているとのことです。1/10の企業しか実質その任に就いていないということですね。ということは貴重(重要)な存在と言えるかもしれません。

2.CHROの機能とは?

上述の通り戦略策定から実行まで、人事領域での全責任を負っています。具体的には企業の「ミッション:使命」「ビジョン:志」「バリュー:行動指針」の策定から、人事ポリシーの策定、組織の設計、人の配置方法策定、人事の仕組みの運用(採用、配置、育成、評価、昇格、退職)、職場環境の改善、福利厚生、労務管理の責任など、管掌範囲は幅広くなっています。

3.CHROはどのような役割を担っている?

役割:企業の業績向上に繋がる行動を分析、予測しリーダーやメンバーに指示をする。

注意をしないといけないのが「企業の業績向上」。業績を向上させるには外部環境の分析や、企業としてどこに資金を投下すればよいのかということもCHROは考えねばならないということです。そのためにはマーケティングや会計や財務の知識も十分に備えていなければなりません。

人を採用するにはお金がかかりますので、特定の部門に投資することが必要か判断力が問われます。自社の財務状況を把握し、全社でコミットした収益を上げるためには現状いつまでにどれだけ収益をあげねばならず、それはどこの部署が最も効果的で、そこに従事する人材の必要なスキルは何か把握し、スキルを持つ人員をどのようにどれだけお金をかけて採用していけばよいのか。そして採用をした人員の生産性を最大にするためには既存の仕組みをどうフィットさせていくか、既存含めメンバーの動機付けにも配慮せねばなりません。

その為、幅広い知識を持ち、そもそも自社や部門の課題は何であるのか?といった状況把握能力も必要です。そして仕組みを整備するだけでなく、運用も効果的に行う責任もあります。制度を作ったら後は現場に投げっぱなし、ではいけないということですね。

またメンバー個々人の事情は最大限考慮しつつも、特定のメンバーの不満をなくすことに偏った仕組みや運用をしてはなりません。あくまで公平性のもとに「企業の業績向上」を実現することが大事です。

論理的に設計しつつも、メンバーがどう思うか気持ちも想像し、実効性のある仕組みと運用が大切です。あまりにもCool過ぎては人の心は動きません。

核となる知識や経験を基礎としてその他経営者に必要な知識も備え、メンバーの心情を理解できる人物がCHROにふさわしいのではないでしょうか。

4.終わりに

なんらか原体験に基づいた記述がないと記事の価値が無いと思い、CHRO含む「CXO」と呼ばれる人材が本質的に日本で育ちにくい(上述の通り少ない)のは、多くの企業でCXO(もしくは経営者)の立場に立つ人は組織風土に馴染むことと、長期的な会社への盲目的な忠誠に基づく内部昇格でその地位を得ているという実態が原因ではないかという問いだてをしてみました。

私自身セールス(営業)が長いのですが、再現性無き手法で経営者の地位を得た人物が部門の長となる組織は、自らの経験からその組織が衰退させられる危険性が非常に高いと考えています。

個人で超絶驚いた経験が何度かあるのですが、部門の収益目標を達成する為のメンバー1人当たりの目標を、従来の実績と当該年度の予測を掛け合わせても全く達成できない数値を経営者が立てていたことがありました。昨今のムーンショットとかそういったポジティブな類とはそもそも異なり、潜在顧客数含め対象となる顧客の数がどれほどで、どれだけの顧客が自社に興味を示し、どれだけの顧客が購買に至り、その購買商品は何でどれだけの収益単価を従来のデータは示し、それを元にした場合どれだけの件数を販売せねばならないか。そしてそれを実現するにはどこに課題があるか?収益構造を分解し、どこに課題があり修正せねばならないか。それすらも把握出来ていない状況で目標を立てる経営者がいたことには驚きを隠し得ませんでした。ちなみにその年はとある費用を削り収益目標を達成しました。

収益構造を分解し、課題を発見し改善提案を重ねた私は期末時点でその部門にはおりませんでしたが😱

これに類似したことは複数の組織や企業での経験済みなのですが、詳細は割愛しますが「その1」や「その2」で述べた企業の不祥事と共通する要素があると思います。それは「PL脳」と呼ばれる性質です。このPL脳に関する記述は朝倉祐介さん著:ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論 でわかりやすく説明されています(PL脳:目先の売上や利益を最大化することを目的視する、短絡的な思考態度)。

利益を上げることは当然大事なのですが、それ以前に大事にしなければいけない価値観やビジネスのルールを逸脱して良いのでしょうか。

しかしながらPL脳に蝕まれた方もある意味不幸かもしれません。真の組織風土がPLを最優先するものであれば、そこに長くいることでその風土に馴染んでしまい、環境や財務分析を基にした良識ある判断ができなくないのかもしれません。

「その1」冒頭に通じるストーリーとして最後に記述させていただきました。

こんなんわざわざ言われんでもどの組織でも同じじゃい、と読者の皆様には突っ込まれるかもしれません。

しかしどこもかしこも似たような組織であるならば、ひっそりそこから抜け出し、周りが気付く頃には打たれないほど出た杭になってしまえば、勝ち組になれるかもしれません。であるからこそまだ国内に1/10の企業しか取り入れていないCHROという機能は重要であると言えるのではないでしょうか。

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?