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FCC問題 Sharpモニター|A&A Japan8

デスクトップコンピュータは、本社フォートワースで設計製造していました。しかし、周辺機器のモニターやプリンターは、全て日本メーカーのOEMでした。80年代はまだまだ台湾や韓国メーカーが台頭して来る前でした。

米国で販売する製品は、電波障害をクリアするためにFCCの認証取得が求められます。

当初は単体取得でしたが、コンピュータ本体に接続する周辺機器をセットで合格するようにFCCルールも変わりました。

シャープ矢板工場の製品でモニターOEM開発が始まった時の思い出です。

CRT color monitor

外観デザインの色やロゴバッジ、同梱される取扱説明書なども全てTandy版にするのと並行して、製品自体の機能及び品質評価もworking sample、pre-pro sample & production sampleの3段階で進めていきます。

35年も前の事ですが、このシャープのモニターがFCC認可テストに合格に四苦八苦した事がありました。技術者N氏の孤軍奮闘をよく覚えています。

FCC と UL認可は必須

デスクトップ本体は単体でFCC認可済み。しかし、外部周辺機器接続との設計が甘く、モニターだけで電波対応はどうしようもない。日本でテストしても埒があかず、とうとう技術者N氏が単身渡米。

FCC試験データを測定出来る認定サイトは限られていて、当時はカリフォルニア州のサンマテオ市にある測定所までN氏に同行しました。私は通訳兼運転手としてのお手伝い。

本体製品は他周辺機器とFCC取得済だったので、モニターで対応しろという当然な本社側のコメント。ロジカルではそうなのですが、測定してみるとコンピュータ本体から出るノイズが悪さをしているのが明白。

現場で製品の向きや接続ケーブルを動かしてみたり、Nさんに言われる通り色々と試しました。解決策見つからず、夕食に連れて出ても食の進まないNさん。夜中近くは時差のある日本と会議して前後策の検討されていたのでしょう。インターネットが未だなく、国際電話料金も高かった時代ですから大変だったはず。

時間の経過と共にプレッシャーで疲労困憊の様子がありありと顔に出ているNさん。最終的な解決策が見つかったのが滞米中だったか、日本帰国後だったか記憶が曖昧ですが多分後者だったと思います。

なんでもないようなこのお手伝いが、その後の私の仕事の姿勢の背骨にもなるひとつになりました。こちらはバイヤーで強い立場ですが、社長のEYもメーカーさんを大切にと通訳程度にしか役に立たない私をテキサス州からカリフォルニア州まで出張指示。

製品開発の裏で起こっている様々な課題や努力。技術者でないから判らない事は何でも技術者に聞いて教わました。メーカー側に教えてもらう事が多くありましたが、米国という巨大な市場で販売する事で予期もしない物流などで起こる仕様問題は、本社の品管に教わり驚くことも多々ありました。

中間に立つ役割の者は、単なるメッセンジャーボーイでは意味ないし、どちらか一方に偏った判断で動いては、本当に良き長いビジネス付き合いは出来ない。会社の看板や立場でなく、裸の自分という等身大でお付き合いする信念のもと、色々と頭も口も突っ込んでいった駆け出しの頃でした。その経験が大きな財産になったと自負しています。

そんな若僧を暖かく、根気強く教えてくれた本社やメーカーの方々に感謝しかありません。それも両社にとって良かれと思う一所懸命な姿勢をみてくれていたのかもしれません。

耳や目から入った情報を咀嚼せずに口から発しても人々の心には響かないと思います。頭の中で咀嚼するにも身体を使った経験こそがものを言う。

経験は大切な自己投資だと思います。

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