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【創作】 逆光

産まれた時から死ぬ事に気づいていた

そういって、焼き芋を頬張り喉に詰まらせて死んだ
それが私の父だった

目の裏に上映される父の映像は、
青色で、水色で、いつも私は下から父を見上げている
逆光模様

私はもう、次で大学生になる
なにもない日常

喫茶店に行って、喫茶店の空気を吸い、
喫茶店で流れるジャズに一礼し、
会計を2倍盛った定員を殴った

特にこれといって何もやりたい事がなくて、
やりたいことが無いのも才能だという本を古本屋で立ち読みし、破って、流れる涙で地面から本を浮かべた

やるせなくなって、意味もなく伸ばしたブリーチした自分の毛をちぎった。
ゴールデンレトリバーの抜け毛のような日本人の自分の毛を、見つめて。
どこぞの小学生が施した
かびた虹の橋を渡る

古本屋の定員は、泣いた私を見て
すかした笑顔を浮かべハンカチを渡してくれたけど
何故かいまだにそのハンカチは捨てられないし
その定員のすかした笑顔がずっと隣で覗いてくる

会ったことの無い母親に挨拶をし、
光った今という事実をハンドルと共に握りしめ、
また喫茶店でいつものサンドイッチを頼んだ

テレビからは悲惨なニュースが今日も流れていて、
馬鹿な定員は上達しないギターを練習する

ふと窓から外を眺めると、
半透明な父親も、
サンドイッチを喉に詰まらせていた。

自分も薄く水色で、
手のひらは透明になっていた   





もという事は主人公も喉に詰まらせています



過去に書いていたものです!




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