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【創作】 赤いトサカ

僕がこれまで楽をして生きてきた罰が今、
目の前で実行されている

鶏が、ニワトリが、殺されてる

ナイフでけちょんけちょんに。

僕の唯一の友達なんだ
これまで56年間生きてきた中で


彼は僕よりも人間臭い鶏だった
彼には、鶏臭い人間だなと良く言われたものだ


僕は20代の頃、女に困ったことがなかった
死ぬほど愛しているよ
と言うと、50人に1人は口に銃口を当てそのまま自殺する悪い宝くじに当たったような女もいたが、
僕は女のことを男の為に生きている存在としか思わず、国のお偉い政治家なんかの意見も皆そうだったので、
"可哀想"なんて思う欠片も世間には落ちていなかった

30代、僕は宝くじに当たりそのお金で今の今まで暮らせるようになる。なにも苦しいことなんてなかった
30代の思い出としては、1度だけ熱を出し食べたおかゆが意外と美味しかったこと。それだけだ
そのおかゆも、名前も忘れた髪の長い女に作らせた

40代、これまで生きてきたけど、そういえば泣いたことないなと思って全米が泣いたと謳われる映画を5.6本レンタルビデオ屋さんで借りて夜通し鑑賞してみた

なんにも泣けなかった

バカでかいスクリーンで、
スピーカーもこの世で売っている1番いい音質の物なのに

泣けないことで、
初めて苦しいと感じた

その頃、気づけばあんなに沢山いた恋人達や不倫相手は、1人残らず僕の傍から消えていった

皆、1人残らず僕のそばに居た頃よりも幸せになっていて

その時、初めてぽつりと1滴涙が出てきた

そんな僕の貴重な涙を小瓶なんかに詰めておいて、
後から何度もその小瓶を眺められるようにしておけば、
こんなに苦しくはなかったのかもしれない


お金は使っても使っても余る
唯一の楽しみだった綺麗な女性達は僕の周りから消え去って、ただ無駄に過ぎた時間と生ぬるい缶ビールは相性が悪かった


無駄にでかい家

無駄にでかいソファ

飼ってみたかった大型犬

すっかり老化し、よろついた足でそのままペットショップへ向かう

お前を助けてあげるよ

ペットショップの中で、
えらく低い声で檻の中から聞こえてくる

そいつが、鶏(ニワトリ)だった


彼は、本当になんでも知っていた
山のこと、海のこと、危険な宗教のこと、鯛の1番美味しい部分のこと、雌の鶏の偉大さ、感情の素晴らしさを


そんな彼は今、
僕の目の前でナイフで切り刻まれている

僕が住んでいる国は、
鶏を飼うことを禁止しているらしい

初めて知った
馬鹿でかいテレビは家にあるけど、
ニュースなんて見ないから。

それにそんな事、彼は教えてくれなかったし


こんな国、狂ってやがる

「あばよ」

彼の赤いトサカが切られた瞬間、
何故か僕はこう思った

彼の分まで生きていきたいって






不正出血と低気圧と、あと面白くないただの下ネタを最近モロに直接的に聞いて、気圧で元々吐気あったのに余計に吐き気を催しまして、あ〜、創作できそ〜苦し〜😂と思ったら、こんな創作ができました。ロックンロール


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