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The ProdigyのBreatheは、文字通り呼吸法の歌だった

最近、ひょうんな事から、80年代90年代に聞いていた音楽を思い出して、
New Order, The Prodigyなどのテクノ、電子音楽、エレクトロニックロックを聞いています。どれがどれに分類されるのかわからないのですが。

当時は、単純に、ドッドッドッドッドというビートのかっこよさや、低音が心音のように体に響くのが心地よくて、音楽と調和できて楽しく思っていたのですが、今回、しっかり歌詞にも耳を傾けてみると「なんとも素晴らしく良いことを言っているじゃないか!」ということに気がついたのです。

それが、The ProdigyのBreatheという曲。ちょっぴり不穏なイントロから、ドコドコドコドコ、シャキンシャキンとビートの電子音がかっこいい。プロディジーの曲は、テレビや映画などでも、よく使われるので、知らないうちに聞いたことのある方も多いと思います。緊迫した状況から脱出する場面のBGMに合う印象で、何より、とてもかっこいいです。

さて、Breathe=ブリーズとは、すなわち「呼吸」の歌です。曲調からは、不穏で危険な雰囲気を醸し出しながら、実は「呼吸法」を教えてくれる健康的な歌です。ものすごくタメになる、良い歌詞です。

自分の中の不安や問題に対して、自問自答しながら向き合って、呼吸で解決していけという内容。体と心の原点ですね。

もちろん、解釈は訳し方によります。彼らのダークなかっこよさを堪能したい人は、不穏な感じに訳す方が、しっくりくるかもしれない。でも、私は、彼らの純粋さ、真髄を見極める眼にかっこよさを感じるので、健康的な感じに訳してみたい。健康的に訳すと以下のようになります。

「原文」          「私の解釈」

Breathe the pressure     プレッシャーは、呼吸で対処しよう

Come play my game     さあ僕と一緒に自分と向き合ってごらん

I'll test ya          よし、試してみよう

Psycho-somatic, addict, insane 心身症、依存症、精神障害  

Come play my game     ほら、向き合って

Inhale inhale          吸って、吸って

You're the victim      (心身症、依存症、精神障害は)君のせいじゃない

Come play my game     さあ僕とやってみて

Exhale exhale exhale     吐いて、吐いて、吐いて

ピラティスでもヨガでも、呼吸は、吸うことより、吐くことへの意識を高めることが大事だと教わります。深く吐くことで、深く吸えるようになるのです。歌詞の中では、しっかり、吐く=exhaleの方が、一回多いじゃないですか!素晴らしい。

しかも思うのですが、人が、不安な時って、意外と、静かに落ち着く音楽より、自分の中の不穏な空気に合ったビートを求める気がします。私がそうです。ストレスが溜まって、脈が早い時は、落ち着いた音楽を聞いてみるものの、じっとして聞いていられない時もあります。意外と、テンポの早い曲を聞いた方が、音楽と調和できて、ストレスを発散できて落ち着きます。

そうなると、心身症、依存症、精神障害で心を乱された人には、このプロディジーのビートの方がしっくりくるのではないでしょうか。気分も上がるし。
そして、まずは、リズムで肉体にアプローチしたところで、気が付くと歌詞にメンタルへの対処法が盛り込まれているという素晴らしさ。ビートに合わせているうちに、自分に向き合う方法を知ることができちゃうのです。

もちろん、ものは解釈のしようです。プロディジー的には、こんな「健康ソング」だと思って欲しくないとは思います。笑

独特の「フリーザ」のような声と逆モヒカンのボーカルのキースは、残念ながら、数年前、49歳で自ら命を経ってしまいました。統合失調症の傾向があって、うつ病にも悩まされていたとか。
彼が身を削って作った、魂のかけらが散りばめた曲たちは、きっと、同じような苦しみを持つ人を癒していることと思います。

キースの写真をみると、いかつくて悪魔的な雰囲気でクレージーさを発していますが、明らかに、瞳は透明感に溢れ、繊細で純粋な様子を感じます。歌にも、ダンスにも、お腹の底からのピュアな思いを感じます。
心の底から、誠心誠意つくられ、歌われた曲だからこそ、こうして長年、聞かれ続けるのだと思いました。