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東京だってふるさと

私は、転勤で海外に住んでいた時以外は、東京生まれ東京育ちです。下町でも山手でもない23区の端っこの「とかいなか」ですが、東京は私の大切なふるさとです。

高校くらいまでは、周りはほぼ東京の人だけだったけれど、大学や会社に行くと、東京以外の地域から引っ越して来た人も増えていきました。
すると、その中で少しずつ、東京の悪口を言う人にも出会うようになっていきました。住みなれた愛着のある故郷から、家族と離れて暮らすのが辛いこともあるでしょうし、人口も多くて狭い東京の生活は、ストレスがだったのでしょう。
「東京はストレスが溜まる」「東京の人は冷たい」などなど、好き放題に面と向かって言われて、いい気持ちはしないです。

もちろんその通りな部分もあるので、こちらとしては、「そうですよね。住みづらいかもしれないですね。」とお話は聞きます。実際に、東京のダメなところもあるので仕方ないけど、お話を聞いていると、どんどんエスカレートする人もいます。

私も外国に住んだ経験があるから、よそ者としてよその土地に住む苦労もわかるので、大変なんだろうなとも思うのですが、一回悪口を許すと、会うたびに愚痴る人もいます。
どんな種類の悪口もそうだけど、うっかり一回聞いちゃうと、そういう人は、「この人は悪口を聞く係」と任命されがちなので、気をつけることが大事です。
一生懸命に悪口を聞いちゃうと、怒りをぶちまけることに快感を覚えて、怒り続ける人もいるので、むしろ相手のためにもならないこともあります。
カウンセリングやセラピーは別として、愚痴は15分以上聞かないのが大事だと何かで読んだことがあります。あとは、カウンセリングやセラピーに行ってもらいましょう〜笑

話は、東京に戻りますが、最近、特に気になるのが、テレビのタレントが番組やインタビューで、
「東京は、お仕事をするだけのところだから。」
「東京は、ストレスが溜まるから住みたくない。」
「東京の家は、帰って寝るだけの場所です。ふるさとでリラックスします。」
というようなことをいう人がいることです。タレントだから、面白おかしくお話している部分もあるでしょうし、自分のふるさとへの愛情表現の一種なのでしょう。そりゃ、自分のお里のほうがいいですよね。初めは、そうね、面白いわね、と思ったこともありますが、あまり何回も聞くと、人のふるさとをちょっと雑に扱いすぎじゃないかな?と思っちゃいます。

たぶん、こういうコメントが世間でウケているのでしょう。同じように東京にお仕事のために来て、ストレスを感じている方には、「そうそう、よくぞ言ってくれた。」と共感されるだろうし、東京出身の人には「まあ、東京は他と違うからね。」という特別感を感じさせるのかもしれないですね。

ただ、いつも思うのが、皆さんの大事なふるさとと同じように、東京の人には東京は大事なふるさとだっていうのは、忘れないでほしいと。東京の人は、東京にノスタルジーも感じるし、愛着もある。

以前、地方から友人にそう伝えると、「へえ、そうなの?」と言われたけれど、そりゃそうです。幼い頃の思い出もあれば、ここの空気や水で育ったのだから。東京の人にとっての東京は、生活感のある土地、暮らしそのものだし、繋がりでもあるし、自分の土台でもある。

子どもの時に遊んだ商店街や住宅街の曲がり角、
賑やかで新しい街の裏路地のアスファルトの割れ目から咲く小さなスミレ、
高層ビルや新しいお店が並んでいる裏に急に現れる昭和なお店、
もう廃墟かと思っていたボロボロのアパートで遊んでいたら住人のおじいさんに
水をかけられた思い出、
大通りから入ったところの小さな庭のある古いお家に生えていたフキを勝手におままごとに使ったこと、
雪の日に空き地に入って足跡をつけた感触、
駄菓子屋のおばさんが怖かったこと、
区民プールの帰りに公園で食べた50円のおでん、
井の頭公園の川遊び、
知らない道を探検して自転車でどこまでいけるか走ったら新宿についた思い出、
街の中で見つける、小さな自然や遊びなどの拠り所がたくさんありました。

東京の人は冷たいと言うけれど、全員が全員、東京出身ではないのもポイントです。しかも、これだけの人口多いってことは、昔から人をたくさん受け入れているからじゃないでしょうか?

もちろん、働き手が欲しい&仕事が欲しいという利害関係がお互いにあるかもしれません。それでも、結果的にこうして大勢が暮らしているいうことは、東京がある意味、移民(移動してきた民を)の受け入れをしてきたわけです。

東京には、そりゃ冷たい人もいるけれど、偏見を持たずに相手のことを尊重した距離感を保つことで、多くの人を受け入れているから、という部分もあると思うのです。

「東京の人」って一言に言うけれど、意外と純粋な東京の人は少なくなっているし、よそから来て東京に住んでいる人も多い。
東京の人間同士の会話の中でも、お互いにこの人は東京出身だなとか、
本人は東京生まれ東京育ちだけど、親御さんや親戚は違うかもとか、些細な違いを感じ取ることがあります。

それは、人が何か育ちや環境から身につけたものを醸し出すからだと思います。
きっと、他の地域の人も同郷の人同士で、そういったことをなんとなく感じるのじゃないかな。あの人は、あの地域の雰囲気があるとか、同じ地域出身かもしれないとか。

以前、細野晴臣さんが、さまぁ〜ずの二人に(お二人は下町っ子)
「さまぁ〜ずは、東京の人が好きな東京の人だよね。」って言っていたのが、まさにその通りで、細野さんの表現力はさすがです。東京のきらびやかなところでも、ストレスだらけのところでもなく、暮らし、家族、仲間、土地に根付いた親しみを感じさせてくれるから、見ていて楽しいし、安心する。親戚の人を見てる気分。さまぁ〜ずの雰囲気は、東京の人以外でも同じように感じてるから、長年みんなに愛されているんじゃないかな。

何を言いたいかというと、東京の人だって、故郷を思う気持ちは同じです、ということです。なので、東京のストレスはわかるし、改善の余地だらけの土地だけど、優しい気持ちで、みんなで東京を作っていきたいですね。

そして、東京に越してきて、東京を好きになった方もいらっしゃると思います。
23区出身の人は、ハングリー精神や冒険心に欠ける人も多いので、東京が今もこうして繁栄して機能しているのは、そういう方々の力が注がれたからだと思います。ありがとうございます。

東京がこれからますます素敵なところになるように、私も頑張りたいです。