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10秒で描いたキャラクターに命を吹き込んでしまった

背中に目は付いていないが、
視線を感じたのだ。
不思議なことに。

新幹線の中での話だ。

前回の日記に書いたが、前夜の飲み会の余韻を引きずりながらも、わたしと恋人は朝、新神戸に向かう新幹線に乗っていた。

寝不足もあり、しばらくすると彼は隣で爆睡し始めた。その隙にわたしはスマホで、noteに載せるための日記を書き始める。

その日記には、父と二人で淡路島をドライブした際、死ぬかと思った思い出を書き連ねた。

日記を書き終え、iPadとペンシルをリュックから取り出し、次は日記に添えるイラストを描き始める。

文章の内容に合わせ、わたしはパーカーをかぶるネコを描くことにした。しかし、これが思いのほか難しい。何度か描き直したが、フードをかぶっている感じを描くと、全身タイツ(というか上半身タイツ)の謎の動物のようになってしまう。

そのうちにふと、視線を感じた気がした。そこで気が付く。わたしは新幹線の通路側に座っており、iPadはそれなりにデカい。すぐ後ろの席から、画面は丸見えだろう。

わたしは「トイレは車両の前のほうかな?後ろのほうかな?」と確認するふりをして(特に尿意はなかったが)、パッと後ろを振り向いた。

すると1列斜め後ろに座っていたおじさんとバチッと目が合った。すぐに目を逸らされたが、見逃さない。やはりおじさんはこちらを見ていたようだ。

となると、わたしがひたすら全身タイツの動物を描いては消し、描いては消し、産みの苦しみに頭を抱える様子を、おじさんに見られていた可能性は高い。

自意識過剰かもしれないが、途端になんだか恥ずかしくなってきた。おじさんはさぞ、「この人は何を目指して、何を描いているのだろう」と不思議に思ったことだろう。

いったんトイレに行って心を落ち着ける。そしてもうパーカーを着たネコはやめて、もっと簡単なものを描いて終わらせようと思った。大幅な方向転換である。

その結果、描いたのが、こちらの淡路島(誰がなんと言おうと淡路島)。

淡路島の人、ごめんなさい

島の形は実際の地図を確認しなかったが、何となく指をさす手のようなイメージがあったので、それをそのままキャンバスにぶつけた。このままでは淡路島の人に悪いので、せめて顔を描いてかわいらしさ(?)を演出し、自然が多いだろうということでワンタッチで緑色に塗りつぶして終了。

おじさんの目にも止まらぬ速さで、かかった時間は10秒程度である。そして日記を公開した。一件落着だ。

この絵、わたしが消さない限りは今後もnoteに残るので、後日イラストだけ描き直して差し替えようかとも考えた。

だが、いかんせん顔を描いてしまったせいで、なんだか消すのが可哀想に思えてくる。よく見ると、能天気そうな表情の裏から、哀愁が漂ってくる気がしないでもない。「アワジー」と名付け、ご当地のゆるキャラに仲間入りさせたいくらいだ。

ちなみに、今回のこの日記に添えたイラストは、人の視線を気にせず家でじっくり描いたので、10分くらいかかった。

iPadのアワジーを見つめるネコなのだが、苦戦したのはアワジーである。もう一度アワジーを描こうと思っても、以前のような味が出ない。

そのとき、ハッとした。アワジーは、一期一会。日々移ろうこの空のように、この世に全く同じアワジーは一つとしてないのだ。

そう思うと、ますますイラストを差し替えられなくなるわたしであった。

(旅行記を書こうと連日投稿しているが、まだ目的地にさえ着いていないことが恐ろしい。途中で飽きて箇条書きで終わらせそうである)

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BEER党のまいこ
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