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【ショートショート】こういうのでいい【行列のできるリモコン】

   こういうのでいい

 男は行列に並んでいた。視界に入る生き物を三秒だけ操ることができるリモコン目当て。鳩を追い払ったり、女にコートを脱がせたり(本当はその先を望んでいたが当然三秒では足りない)。男もまた、無差別に誰かを不幸にさせるつもりで来た。
 自分の前には男子中学生がいる。もうじき彼の番だ。前の前にいた女がリモコンを操作した直後、子供がぱたりと倒れて騒ぎになったが、男の興味はそそられなかった。
 男子中学生がリモコンを操作する。リモコンは制服の少女(彼の同級生らしい)に向けられている。男は「あ、」と思った。それを指摘する前に彼は操作を終えて、そのまま大慌てで駆け出した。
「好きです! つきあってください!」
 大声の告白が公園に響く。男子中学生は驚いていた。それもそうだ。近くにいた男は気づいていた。

 リモコン、上下逆に持っていたもんな。
 でもよかったよ。女の子頷いてたし。

 男はどうでもよくなって、リモコンを操作せず列を抜けた。



 毎週ショートショートnote
 お題「行列のできるリモコン」で「青春の香る」ショートショート
 文字数407字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)