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【ショートショート】可燃性のやさしさ【半分ろうそく】

   可燃性のやさしさ

 ろうそくは意外と薄情だ。感情を揺さぶられていては頭の炎も無駄に揺れて消えてしまう。どんな状況でも冷静にやるのが一流だ。
 中には例外も出てくる。あるろうそくはとてもやさしいろうそくであった。先輩方が様々なイベントで冷静に炎を揺らす中、やさしいろうそくはその一つ一つに感激したり、落胆したり、涙を流していた。「あいつの半分はやさしさでできている」と誰かが言い出して、そのろうそくは市販薬の名前で呼ばれるようになった。
 そのろうそくがいよいよイベントに参加した。最初の頃は浮かれて炎を揺らしていたが、そのうちコツを掴んだのか揺れなくなった。半分燃え尽きるころには随分と慣れたものだ。
 誰かが「随分とサマになったな」と声をかけた。しかしそのろうそくは鼻で笑うだけで返事をしなかった。
「どうしたんだアイツ」
「何かあったのか?」
 ざわめくろうそくたち。そのうちの一本が「あ」と声を上げた。
「先に半分の優しさが燃え尽きたのか!」


 毎週ショートショートnote
 お題「半分ろうそく」
 文字数403字


気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)