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【ショートショート】スパイス【パフェフンフン33秒】

   スパイス

 この喫茶店のパフェは不思議だ。
 運ばれてから少しの間、フンフンと鼻歌を歌う。僕は試しにスマホのストップウォッチ機能で時間を計ってみた。きっかり三十三秒。三十三秒歌ったらすっかり黙ってしまう。僕はここのパフェを注文するたびにソイツのフンフンを聴いていた。
「どうして鼻歌を歌うの?」
 ある日の歌い終わりにそんなことを聞いてみた。パフェは少し驚いた様子で答えた。
「そんなの、美味しく食べてもらうのが楽しみだからに決まってるじゃない」
「そうなの? 痛くない?」
「全然」パフェは笑いながら答えた。
「私は生き物とは違うから」
 僕は感心した。
「さ、早く食べて頂戴」
 パフェがせかす。
「いつものように、美味しく食べてね」
 幸せそうに、ソイツは言う。
 僕は長いスプーンを手にして、てっぺんのアイスを一匙掬った。おいしい、と言っても返事はなかった。さっきまで鼻歌歌って喋ってたクセに。
 僕は丁寧にパフェを食べた。いつもと違う味がした。


 毎週ショートショートnote
 お題「パフェフンフン33秒」
 文字数408字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)