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【ショートショート】石と棒きれ【戦国時代の自動操縦】

   石と棒きれ

 カラクリを応用すれば武士が直接戦う必要がない。そう気づいた彼らは大量のカラクリ人形を作り、戦を自動化した。
「よし、我々の軍が押しているぞ」
 戦況を見つめる将軍の横で、部下がわははと笑う。
「天下統一も夢ではありませんな」
 カラクリたちが殺しあう音が響いている。武士たちは肥えた腹を撫でて、勝利の宴について思いをはせていた。
 ――だから、負けるのだ。
 静寂。血を流して倒れる武士たち。本来将軍が腰かけるべき場所に腰を据えた剣士は、隠し持っていた酒を一口。外ではいまだにカラクリが戦っている。みんなそうだ。カラクリの止め方が分からないのだ。
「それにしても、いい時代になった」
 司令部へ闇討ちを仕掛けた部隊の一員が、けらけら笑いながら言った。
「稚児の戯れみたいな殺し合いをする木偶人形の傍を通り抜けて、司令部をせん滅するだけで戦に勝てるのだ」
 剣士は深く息をついた。
「まことに、その通りだ」
 喉の奥に、酒がこびりついている。


 毎週ショートショートnote
 お題「戦国時代の自動操縦」
 文字数409字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)