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【ショートショート】ぎゃあああ【肋骨貸す魔法】

   ぎゃあああ

 僕の「肋骨貸す魔法」は文字通り自分の肋骨を他人に貸す魔法。が、これが人の役に立つのだろうか。
 と、常々思っていたがチャンスがやってきた。僕は交通事故を見た。女性が蹲っている。肋骨貸す魔法の使い手の僕は、その人の肋骨が無事か否かが一目で分かる。今回は後者だ。
「僕の肋骨を貸してあげます」
 僕は早速、肋骨貸す魔法で女性に肋骨を貸した。
 しかし肝心の肋骨は女性の手元に現れた。普通、魔法の対象者が最も必要とする場所に肋骨が出てくるはずだ。つまり、普通は胸の中のしかるべき場所に出現する。
 混乱する僕へ、女性は笑顔で僕にお礼を言い、軽やかな足取りでどこかへ向かった。
「ひ、ひぃ……」
 すぐ近くで腰を抜かす男がいた。どうやら、脇見運転をした男が赤信号に突っ込んで、女性が撥ねられて肋骨を……ということらしい。
「危ないでしょ!」
 怒り狂った女性は僕の肋骨を構えて、男を刺し殺そうとした。

「ぎゃあああ」

 二人分の悲鳴が、響いた。


 毎週ショートショートnote
 お題「肋骨貸す魔法」
 文字数409字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)