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【ショートショート】特技を生かす場所【イライラする挨拶代わり】

   特技を生かす場所

「挨拶代わりだ」
 そう言って男は電撃イライラ棒をさくさくと攻略してしまった。
 ここは強盗団のアジト。新たな加入希望者は自分の器用さの証明に電撃イライラ棒を持ってきた。手下たちは突然の天才に気を良くしていたが、ボスは難しい顔。
「お前、何で俺たちの仲間になりたい?」
「金がほしい。病気の母の治療費を稼ぎたい」
 手下が「めっちゃいいやつじゃん」と絶句する。
 が、ボスはため息をついた。
「お前はダメだ」
「何故だ?」
「優しすぎる」
 ボスは煙草をもみ消した。
「だが、俺も薄情じゃない」
 そして、卓上の紙切れに何かを書いて、男へ手渡した。
「そいつを持って、ここに行くんだな」

 数日後。
 テレビが賑やかだ。
「本日のゲストは、電流イライラ棒の天才! Nさんにお越し頂いております。」
 強盗団たちは彼の出世によかったよかった、と酒を酌み交わす。
 あの日のように鮮やかなイライラ棒攻略をする男は、強盗団から最も遠い場所にいる。


 毎週ショートショートnote
 お題「イライラする挨拶代わり」
 文字数402字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)