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【ショートショート】空回り【風見鶏ローディー】

   空回り

 老夫婦が経営する小さな雑貨屋の屋根に、風見鶏はいた。魔除けとしての役割は果たせていたものの、その代償なのか客も来ない。
「今日も暇そうだね」
 来るのはこの灰色の鳥だけ。風見鶏は曖昧に笑った。
「もう少し活気があれば、お客さんも増えると思うんだけどなぁ」
「なら、歌おうか?」
 風見鶏は灰色の鳥の方を見た。彼は少し咳払いをした。
「こう見えても、歌には自信があるんだ」
「いいのかい? なら、僕が場を整えるよ」
 さて、風見鶏ローディーは大忙し。灰色の鳥のため。老夫婦のため。お客を呼び込むため。そりゃあもう頑張った。風でくるくる回りながらの頑張りに、灰色の鳥も意識が高まる。彼の頑張りに答えねばと、気合い十分。
 そして、いよいよ準備が整った。
「お願いします」
 風見鶏ローディーに、灰色の鳥は微笑んだ。
「任せて」
 そして、素敵な声で歌い出した。

 店先の老夫婦が、おや、と顔を上げた。
「あなた」と、妻が呼びかける。
郭公カンコドリが鳴いてるね」と、夫が答えた。


 毎週ショートショートnote
 お題「風見鶏ローディー」
 文字数409字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)