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【ショートショート】秋の空時計【秋の空時計】

   秋の空時計

 引っ越し先の近所にあるS公園。そこの時計には針がない。文字盤はただの青空だ。これが「春の空時計」だったとしても僕にとっては違和感がない。季節の移ろいに鈍いからかもしれない。
 もしかすると、時間帯によって空が変わるのだろうか。が、文字盤が夕焼けや星空になっていたことはない。少なくとも僕は見たことがない。

 ある日、秋の空時計に変化が生じた。古いスピーカーから、「ちいさい秋みつけた」が流れ始めたのだ。
「あ、秋の空時計が鳴った!」
 子供たちが声を上げた。
「つまり、これは秋をお知らせする時計なの?」
 僕が思わず質問を投げると、子供たちは口々に答えた。
「そうだよ!」
「秋に時計が鳴るの」
「一年に一回だけ!」
 僕は首を傾げた。
「どうして、秋限定なの?」
 子供たちはにやりと笑った。
「秋はたのしいことがいっぱいあるから」
 再び、子供たちが口々に答える。運動会。お絵描き大会。保護者らしき人が叫ぶ。「明日、焼き芋しようか!」と。


 毎週ショートショートnote
 お題「秋の空時計」
 文字数409字






 いつもはお題とは別にタイトルをつけているのですが、今回ばかりは「秋の空時計」というタイトルが一番しっくりきたのでそのままにしました。

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)