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【ショートショート】おちこぼれのふたり【ポポパポペピアノ】
おちこぼれのふたり
閉店時間を過ぎ、誰もいない店内で店主は必ずポンコツピアノを演奏する。鍵盤を押すと「ぽーん」、メロディを奏でれば「ぽろろん」。安っぽい音色だ。
「君の音色は優しいんだ。きっと必要とするピアニストが現れる」
店主が弾くのはいつも決まってユモレスク。彼は毎日飽きずに同じ曲を弾く。
「その、必要とするピアニストとやらはあんたのことじゃなくて?」
「僕はピアニストじゃない」
「なりたかったんだろ。知ってるよ」
店主が演奏を止めた。曲の途中だった。夜の静寂の中、ポンコツピアノの声が響く。
「俺とあんたと、二人で目指さないか?」
ポンコツピアノは焦ったが、もうどうにもならない。急いで言葉を続けた。
「別に、あー……ウィーンとか目指さなくても、ちょっとしたイベントくらいならできるだろ」
ぽーん、とポンコツピアノの音色が響く。
「……悪くないかも」
店主は、演奏を再開した。
「泣くなよ、俺が悪いみたいだろ」
ポンコツピアノは、軽口を叩いた。
毎週ショートショートnote
お題「ポポパポペピアノ」
文字数403字
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)