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【ショートショート】現代の鬼退治【名を自動転売鬼】

  現代の鬼退治

 規制強化を掻い潜り、効率まで目指し始めた転売屋は、いつしか人類とは別の進化を遂げた。迅速に獲物の情報を掴み、列に並び、根こそぎ商品を買い取り、転売と分からないように売る。徹底的に無駄を削いだ習性から、誰が名付けたか自動転売鬼。
 今日も一匹の転売鬼が、人気ゲームの抽選販売に並ぼうとやってきた。見た目は人と変わらないので転売鬼とは分からない。そこで転売鬼はふと、自分の行き先に立ちはだかる人影に気がついた。
「お前……」
 一歩後ずさる転売鬼に、相手は遠慮なく距離を詰め――抜刀。転売鬼は胴体を両断され、その場に崩れ落ちた。
「さ、殺人罪……」
 転売鬼の嘲笑に、剣士も嘲笑を返す。
「ご心配なく。転売鬼は人間ではないので殺人罪は成立しません」
 その言葉に何も返すことなく、転売鬼は事切れた。身体は黒いモヤと化して空に昇る。
「残りもさっさとかたづけるか……」
 そうぼやく彼の胸元には「メル狩リmercari」と書かれたバッジが輝いていた。


 毎週ショートショートnote
 お題「名を自動転売鬼」
 文字数407字

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)