北海道出張 帯広へ

 芦別から3時間程車を走らせて帯広到着。ここでの目的は『奥さんと子供に会う』とのこと。奥様が仕事を終える夕方までSさんの行きつけだと言う市内の喫茶店で過ごす。久しぶりの一家団欒との事なので私はホテルで待機すると申し出たが、お二人に紹介すると言ってきかないので夕食に着いていくがどうにも気がひける。奥様と幼ない息子さんに挨拶し、食事を済ませると次は息子さんのリクエストで日帰り温泉に行く事になった。

 成り行きとはいえ一家団欒に着いて回ることになってしまって何だか申し訳ない。それにしても今回の出張は何だったのか。まともにロケハンをしていないし、制作時期や締切などの話も無い。父と子の団らんを湯船に浸かって眺めながらそんな事を考えていた。

 Sさんは帰宅する奥様とお子さんには同行せずホテルに泊った。何か事情があるのだろうが巻き込まないで欲しい。翌日半休を取ったと言う奥様とお子さんと再び合流して日帰り温泉へ。そこで風呂に入り昼食をとって千歳に向かった。小学校に上がる前でまだ幼ないながら非常に行儀がよく物分りの良い息子さんだったが、別れ際に見せたとても寂しそうな表情がいかにも幼い子供らしくとても印象に残った。

 千歳までの下道による行程は旅の終盤を飾るある意味ハイライトだった。ガソリンを補給しないまま帯広を出てしまい、そのうちスタンドがあるだろうと思っていたらこれが全く無い。気がつけば日勝峠に入っていて周囲は濃い霧でなにも見えない。前の車に10mも離されるとテールランプさえ見えないので離れることが出来ない。そして走る車のペースが速い速い。10年程前のバイクツーリングの経験で道内のペースの速さは知っているつもりだったが、濃い霧でもたいしてペースが落ちないのには驚いた。前の車に離されたら追いつく自信はないし前の見えない状況でペースを上げるなんてさらに出来ない。それにもしガス欠になったら退避場所なんて見えないから即後ろから突っ込まれてドカンだろう。非常に心細い値を示す燃料計と前のクルマのかすかなテールランプを交互に見ながら悲壮感と緊張感たっぷりの峠越えだ。その後ガソリンスタンドを見つけたのはさらに75kmほど走った先だった。北海道って怖いところだ。

 6時間の強行軍を終え、慌ただしくレンタカーの返却を済ませてお土産を買いこみ、どうにかこうにか搭乗時間に間に合った。仕事らしい仕事をしていないので、職場で出張の内容を聞かれるのが憂鬱だとかもう一回来ないといけないのかとか考えながら羽田に向けて飛び立ったのはもう夜の8時頃だった。