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カザフスタン「騒乱」1月11日まで

1月2日に始まったカザフスタンのデモは、1月10日にロシアのプーチン大統領が「反テロ作戦の勝利」を宣言、11日にカザフスタンのトカエフ大統領が下院で演説をして、一定の収束をみました。10日には町も人もおちついたようです。ひとまず良かった。

カザフスタンの人たちも分からなかった

「安定していたハズのカザフスタンでなぜ」と多くの人が首をひねった騒乱でしたが、現地の人々も情報を得る手段を失っていたそうです。

デモが凶暴化した1月5日、内閣が責任をとって総辞職。ナザルバエフ前大統領は「失脚」しました。その日に、カザフスタン政府は全国的にネット接続を遮断。テレビやラジオもニュースを一切流さず。7日から部分的に回復するとトカエフ大統領は述べましたが、10日までほぼネットにアクセスできなかったそうです。

(ロイター:混乱のカザフスタン、ネット遮断で数百万人が「暗闇」

トカエフ大統領の言い分

1月11日の演説でトカエフ大統領は、「今回の暴動は、平和的なデモに国際的なテロ集団が便乗して国家転覆をはかろうとした」と断定しました。1月8日には、カリム・マシモフ前委員長を「国家反逆罪」で拘束しています。

ここで注目すべきは、マシモフ氏とトカレフ大統領はともに、ナザルバエフ前大統領の後継者であったことです。いわばトカレフ氏は混乱に乗じて政敵を消したともいえるでしょう。まさかとは思いますが、権力闘争のためのマッチポンプだった可能性もあります。(トカレフじゃねーよ、)

事件を作るリーダー

色々情報を漁っていて、興味深い論文を見付けました。防衛研究所の湯浅剛氏による「中央アジア諸国における統治と大統領リーダーシップ」という論文です。2012年に書かれたもので、ナザルバエフがなぜ長期にわたって政権を保つことができているのか分析しています。

ナザルバエフは概して,何かしらの事件を大義名分に自身の政権にとり有利な制度改変や政策転換を繰り返してきた,いわば「事件を作る(event-making)」リーダーである。

事件を作るリーダー。これはナザルバエフの手法ですが、部下として彼のやり方を長年みてきたトカエフ大統領も、「事件を作るリーダー」になろうとしているのかもしれません。

トカちゃん今後の方針

1月11日の演説によると、トカレフ大統領は、今回の暴動の根本にある経済格差と貧困をなくし、社会福祉や教育に力を入れるそうです。(トカレフじゃねーよ、)

a.カザフスタン開発銀行が行っている政策融資の透明化、b.公共調達の談合の取り締まり、c.国有企業の経営状況の監査強化、d.民営化プロセスの透明化と入札の自由化、e.税関での脱税取り締まり強化などを挙げた。また、インフレ抑制や為替市場の安定化、消費者金融における過剰融資の規制強化、安定的雇用確保のための産業の多角化と製造業の発展、食糧安全保障強化のための適切な農業分野の補助金支給、自動車価格を高騰させるリサイクル税の在り方と管理方法の見直しを目指す。社会福祉充実のため、社会基金「カザフスタン・ハルクィナ(カザフスタン国民のために)」(注)を創設し、医療や教育、社会問題に取り組んでいく。このほか、財政への負担軽減のため、大臣、議員、州知事の昇給を5年間停止することなどを発表した。 (ジェトロ トカエフ大統領、社会経済の抜本的制度改革への指針を発表

うわ、何というてんこ盛り改革でしょう。全部やるのにどんだけ財源あるの?と思ったら、

これら社会福祉の財源は、「エルバス」と尊称されるヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領時代に、世界的富豪の地位を築いた人々からの寄付で賄われるべきだと語っている。(同上)

うわ、これナザルバエフにフラグ立った。汚職・収賄で逮捕でしょうか。

話はそれますが、こういった地域紛争についての情報は、ジェトロのものが下手なバイアスがかかっておらず、日本人にとって有益に思います。

プーチンの目論見と西側の反応については、体力があったらまとめます。無理かもしれません(弱気)



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