デザイナーとの打ち合わせ/2024年春に本を出す(第3話)
打ち合わせも、六年半ぶりくらいだろうか。装丁デザイナーとは初対面であった。昨年12月某日。刊行時期や予価、本の内容やサイズなどが書かれた企画書に、あとがきもつけて持っていく。適正なギャラもわからなかったが、だいたいの予算を伝えてみる。今回は装丁と本文フォーマットを頼む。
受けてくれるようだった。ギャラに関しては交渉が入り、提示した額から多少のアップとなった。なによりデザイナーが満足してくれるのであれば、うれしい。いいものをつくってくれるだろう。本の装丁のデザイン経験はそんなにないようだったが、だからこそよかった。ゆっくりと相談しながら決めていきたかったからだ。色とか本のサイズやイメージなんかを擬音語で伝えてみる。こうパシっと、かわいいやつです。コンパクトだけど、しっかりしてるやつ。伝わったのだろうか。わからない。
おもしろいのは、そのデザイナーは内容のことを一切知らない人なのだ。ある出版社について書いているのだけど、その会社どころか、その代表のことも知らない。逆にそれがよかった。
編集や校正はその会社をよく知っているが、デザイナーは原稿を通してはじめて知ることになる。原稿を書くこちらの責任は重大だが、それがとにかくいい。なるべく多くの人に手に取ってもらうには、その会社を知っている人にだけ届けばいいというわけではない。むしろ全然知らない人に届いてほしい。
そう考えると、原稿ではじめて知ることになるデザイナーは適任だろう。その扉へと誘うようなデザインにしてほしい。しかもデザインは読者がこの本を知るときに、いちばん大事な部分となる。視覚情報はいちばん影響を与える部分といっていいだろう。本を手に取って、モノを触る感覚。本の重さやサイズ感。それらもすべて、そのデザイナーに一任される。
いろいろと話したが、サイズは文庫のハードカバーとなりそうだ。それはこちらの要望でもある。色は青かな。まだわからないが、透明感のある青みたいな話が出た。
最終的には「あーだこーだ言いましたが、どんな色にしてもらってもいいです。なので、原稿を読んでもらえたら、と思います」と伝えてきた。細かく注文をつけることもできるだろうけど、あんまりそういうふうにはしたくない。はじめて仕事をする人だけれど、賭けみたいなものだろうけど、信じるしかない。あるいは、どんなに自分の感性と合わないものが出てきても、それはそれでデザイナーさんが原稿に対して持ったイメージなんだと思える気がする。そんなこんなで楽しみである。
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