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No.2 thatが難しい!?【教えて!ゆずぽん】

Hello Japan from Australia!
ゆずぽんの学び直し英会話フレーズ100📝はお楽しみいただけているでしょうか。きっとお楽しみいただけてるよね。
この記事では、10年の講師生活の中でもトップクラスで生徒が混乱するmこの単語を解説していきます。


【thatって…】

難しい!!!

 中2・中3の生徒からよく出てきた感想です。
中1の始めにthisとセットで出てくるthat。
「あれ」「あちら」「あの」と訳して、thisは近いもの、thatは遠いものと、比較的簡単。
しかし、中2になると登場するのが、「こそあど言葉の“あ”」とは似ても似つかない接続詞that。どういうわけか「~ということ」などという訳になり、果ては省略も可だという。接続詞thatは省略できる、と言った時のとある生徒の唖然とした顔が、私の脳裏に今もくっきりと残っています。
そして中3になれば、受験生の鬼門と言っても過言ではない関係代名詞that。
ここまで来るともはや「訳なし」などと言い出す始末。
訳は無いのに役には立つのか、と、数学の「解なし」に似た理不尽さに怒りを覚えずにはいられません。

「thatだけがどうしてこんなによくわからない意味になるのか…」
初めて対面すると誰もが抱く感想では無いかと思います。文法学習者にとって、ここまでやっかいな単語はthatと冠詞だと言いたくなるほどです。

 実際、文法書を見てもthatは名詞・形容詞・副詞・接続詞の4品詞の単元に登場します。
(関係詞は代名詞と接続詞のハイブリットなので主要な8品詞には含みません)
強調構文のthatと呼ぶしかないような、明確な品詞分類ができない用法まで存在します。  

that の用法一覧

こうやって改めて示されると、もはや絶望です。文法嫌いになる気持ちもわかります。というか私も学生時代英語が大嫌いでしたから、共感しかありません。なんなら今日のこの記事は、15年前の私のためと言ってもいいでしょう。

thatの用法識別に疲れたあなたへ。
今日記事は、こんなテーマでお届けしていきます。

【The Core of "THAT"】

コアイメージは、ある言葉の核・中心となる意味のことです。基本的な単語ほど、用法や訳が多くて日本語訳の丸暗記では対応できません。母語話者がこんな用法をいちいち考えながら話しているはずはないので、それぞれの単語には核となるようなイメージがあって、それを応用している、という考え方に基づいています。このコアイメージをつかんで、より母語話者に近い感覚を持とう、ということです。前置詞(inやatなど)の学習でよく登場する言葉です。

大西泰斗先生の「英文法をこわす」を主な参考書籍として、thatのコアイメージを考えていきましょう。

【The True Meaning of "THIS" and "THAT"】

まずは、基本的なthatのイメージを、相方のthisとセットで確認してみましょう。

this:これ(近くにあるものを指す) 

一般的なthisのイメージ

that:あれ(遠くにあるものを指す)

一般的なthatのイメージ

このように習った方が多いのではないでしょうか。
確かに間違ってはいないのですが、少しだけ言い方を変えてみます。 

this:自分がいるところ(起点)

that:その周り

ゆずぽん的なthisとthatのイメージ

こう言いかえると、あなたの中のthisとthatのイメージが、少し変化したでしょうか。

例えるなら、先の一般的なイメージは、ダブルスの前衛後衛のようなものです。テニスやバドミントンなどのダブルスでは、2人で1つのコートを分担して戦います。守備範囲の半分こですね。

一方、私が示した例は集団球技のボールをもっている人とそうでない人のようなものです。バレーボールやバスケでは、誰か一人がボールをもっていれば、他の人は持っていません。でもチームの誰もがパスを受ける可能性があります。

つまり、ボールを持っている人が基点になって、他の人は「それ以外」と呼べるということです。この考え方は、here-thereや単数-複数にも共通する考え方です。

thatが示すのは「あれ」ではなく、「thisではないどこか」です。

ここでもう一度、始めに示した方のthis・thatのイラストを見てみます。

一般的なthisとthatのイメージ

ポイントとなるのは、男性の目線がthisとは違う、というところです。thisといわれたら、あなたが目を向けるのは相手一択でしょう。対して、イラストの男性は「あちらです」と示されたから、その方向を向いたのです。この方向は上下左右前後、どこでもいいわけです。thatを使えば、相手の意識を望む方向に向けることが出来ます。

実は、これが「なぜthatにだけいろいろな用法があるのか」の答えなのです。

【"THIS" is one and only, "THAT" is unlimited】

「あっち!」

話し相手に突然そういわれたらあなたはどうするでしょうか。

たいていの人は相手の目線や手を見て、示された方向に目を向けると思います。
thatのコア「あちらです」を具体例で出すと、ガイドさんが「あちらをご覧ください」と手で示すようなイメージです。ガイドさんの手の先に目をやると、お城やお店が立っているのがみえます。

「相手の注意・関心の向きを指示する」
これが、いろいろな用法に切り刻まれたすべてのthatがしていることです。

thatの仕事:相手の注意・関心の向きを「ここ」以外に指示する

thatは、いわば「器用貧乏なガイドさん」です。起点となる「ここ」以外をどこでも指示できるので、場所から時間へ、そして更に抽象的になっていきます。

器用貧乏ガイドのthatさん

【Let's Observe the Samples】

case1:place, something visible

先ほど示したthatさんの仕事を頭に置いたまま、例文を眺めてみましょう。まずは比較的イメージしやすいthatの用法から。

例1:That is my house.
That house is nice.
例2:I can't eat that much…

それぞれに、「家」や「料理の量」という指し示すものや様子がありますね。

case2:time

今度は、示すものの抽象度をあげ、「時間」にしてみます。

I called you around 9p.m. yesterday.
-Sorry, I wasn't at home at that time.

私、昨日夜9時ごろに電話したんだよ。
-ごめん、その時家にいなかったわ。

過去を表す「そのとき」という意味の単語はthenですが、この単語はat that timeと書き換えることも出来ます。この時のthatは前文の「昨日9時ごろ」を指していますね。

また、thisとthatの距離感の違いから分かるように、thisは現在(今いるところ)を、thatは過去(今はもういないところ)をあらわします。これらを複数形にしたthese days(この頃)とthose days(あの頃)も同じ時間感覚です。

That was then and this is now.
あのときはあのとき、いまはいま。

こんな言い回しもあるくらいです。過去にいつまでも囚われてしまうような時に、思い出したい一言ですね。

case3:whole event

さて、示すものをさらにぼんやりとさせてみましょう。

一見なんの共通点もないような難しいthatも同じ仕事をしています。さっきまでのちがうところは、「あちらです」と示す先が具体的な物体ではなく、抽象的な内容になっていることです。その中ではまだ分かりやすいのがこの使い方。

I had breakfast at my favorite cafe this morning.
-That is nice.

今朝はお気に入りのカフェで朝ごはん食べたんだ。
-いいじゃん。

英会話でよく使われるこのthatは、「朝ごはん」や「喫茶店」ではなく、「今日の朝ごはんはお気に入りの喫茶店で食べたこと」という出来事全体をざっくりと示しています。

この例文でthisに置き換えてしまうと、目の前にその朝ごはんがあるかのような感覚になるか、もしくは相手が全く話を聞いていなくて、別のことに対して「いいじゃん」と言っているような感覚になってしまいます。

かろうじて意味が通るシチュエーションを考えるのであれば、お気に入りのカフェの写真を見せているところで、その写真の中の具体的なもの、看板や料理など、を指し示してのThis is nice.くらいでしょうか。

thatさんの「thisでなければどこでもいい」というざっくり感は、こんな形で抽象的な「今ここではない出来事」を指すことも可能にしてしまいました。

case4:something abstract

thatさんの曖昧さが見えたところで、いよいよ本題に入りましょう。

接続詞や関係代名詞のthatは、抽象的に「あちら(文の続き)です」と意識を向ける先を示しています。文の意味を理解するときには、thatを「〇〇、というのはね…」と、補足説明のように考えると、英文を後ろから逆走することなく読み進めることが出来ます。

ここでは、thatさんの仕事を眺めつつ、英文を逆走せずに読み進める練習にしていただければと思います。用法と日本語としてきちんと訳したものは、この記事の最後に載せてあります。

thatが必須のもの

1. There are a lot of students / that[who] want to be doctors.

  沢山の生徒がいるんだ、(たくさんの生徒)というのはね、医者になりたいんだ

2. The building/ that[which] stands on the hill/ is my school. 

  その建物、というのはね、丘の上に立っていて、私の学校なんだ

a lot of students, The buildingの内容をthatが「あちらです」と示しているイメージができたでしょうか。

続いて、thatが省略できる場合を考えます。ここでもthatのコアは変わっていないので、まずはthatさんの仕事ぶりを見学してみましょう。

thatが省略可能なもの

3. I know / (that) he is a doctor.

  私知ってるんだ、というのはね、かれが医者だということを

4. I am happy / (that) you passed the exam.

  私幸せ、というのはね、あなたが試験に受かったから

5. The book / (that/which) I bought yesterday / was informative.

  その本、というのはね、私が昨日買ったもので、ためになったんだ

6. I remembered the day / (that[when]) you were born.

  私はその日を覚えているよ、(その日)というのはね、あなたが生まれたの

7. I had no idea / (that) I would became an English teacher.

  考えもしなかった、というのはね、私が将来英語の先生になるということなの

8. The news / (that) my favorite singer will release the new album / made me excited.

  そのニュース、というのはね、私の好きな歌手があたらしいアルバムを発売するということで、私をとてもわくわくさせたんだ

強調構文と呼ばれる次の文も、一番言いたいことだけをIt is の後ろに置いた後は、のこりの内容を説明する必要があるので、thatさんが現れます。

9. It is my high school classmate / (that) she introduced as her fiancé.

 私の高校の同級生なの、というのはね、彼女が婚約者として紹介したのが

thatさんの仕事が、具体的なものから抽象的な指示まで、少しは一貫して見えたでしょうか。

これだけ曖昧な意味だからこそ、先行詞が「人/もの/場所/時」の区別なく「この先説明ですよ~」と示すことができるという訳です。

【Ms.That, who is left out】

 最後に、「省略されてしまうthatさん」と題して、thatの省略について考えてみましょう。

 thatを省略する条件は、用法識別のように複雑ではありませんし、英文読解にも必要なので、thatの省略に気が付けるようになっておいた方がスムーズに英文を読めるようになります。正直、このthatが何用法か、を考えるよりも、省略が見つけられるようになる方が実用的だと思います。

thatの直後に主語+動詞のセットがあるか

これだけです。逆に、先ほど示した1と2の例ではこの塊がない(主語がない)ため、省略してしまうとどれが軸となる主語+動詞なのかがわからないので、省略は出来ないということになります。

それでは、なぜthatを省略するのでしょうか。

文の意味に影響はありませんが、実は、微妙なニュアンスの違いが生まれます。

あなたは、「省略」ときいてどんな使用場面を思い浮かべるでしょうか。日本語で結構です。

私の場合、レンタカーショップのアルバイトでの会話が思い浮かびます。

A「レンタカーをご利用になったことはありますか?」
B「はい、何度か」
A「それでは、ご説明は省略いたします。」

料理番組で、待ち時間が必要な工程まできたとき、「2時間冷蔵庫で寝かせたものがこちらです」と予め用意しておいたものを出して見せるのも「省略」ですね。

つまり、なくても困らないもの、むしろない方が簡潔になるものに対して省略をするわけです。そうすると、thatを「省略してもいいところにわざわざ」入れておくと、何がおこるのか。

・正式な文章っぽくなる 
・句読点のような間が生まれる

意訳してみるとこんな感じ。 

I think she’s genius.    
あの子天才だと思うの

I think that studying English makes our world bigger.
私が思うに、英語を学ぶことで私たちの世界はもっと大きくなる

上の英文は内容もシンプルで、she isも短縮形で表されています。thatが示す先も短いため、カジュアルであったり、話し言葉のようなニュアンスが読み取れます。

一方、下の文はthatが示す内容も長く、主張を述べています。そこから、なにか議論の場のような印象を与えます。結論や主張には注目してもらう必要があるので、thatを省略せずに一呼吸おいているのです。

【おわりに】

いかがでしたか?
「器用貧乏ガイドのthatさん」のイメージが伝わったでしょうか。

thatは、意味が漠然としているばかりに、「なんかまあ説明足したいしthatでいいか」と、用法が増えてしまったように私には見えるのです。「困ったときのthatさん頼み」とでもいうように。その結果、用法ばかりが増え、以下のような文まで作れるようになってしまいました。

He says (that) that “that” (that) that boy said was wrong.

彼が言うには、あの少年が言ったあの”that”(の使い方)は間違っている

過労気味のthatさん。報われる日が来て欲しいものです…。

ここまで強烈なインパクトは有りませんが、3個thatを含む文なら会話レベルでも作ることが出来ます。

I can’t believe that the car that you bought was that expensive.
あなたが買った車がそんなに高かったなんて信じられない

私が普段意識しているのは「ネイティブスピーカーの頭の中」を理解することです。彼ら自身では「違和感」としか言えないような違いが、何によるものなのかを例文から抽出しようという試みです。

前置詞の単元でばかり取り上げられがちなコアイメージを、より大きい文法単元である「現在完了」や「不定詞」といった、用法が煩雑な単元にもあてはめて考えるようにしています。これを続けていくと、話すときに「たぶんここは過去形じゃなく完了形のような気がする」という感覚が得られるようになります。

Today's lesson is over. Thank you for reading.
In fact, "that" is my most favorite word in English. I can't stop feeling sympathy. …I know I'm such a English nerd that I wrote this article😂
Anyway, have a nice day and hope to see you again. 

【おまけ】

先述した通り、抽象的なthatの自然な訳と用法名を書いておきます。thatさんが案内している部分を太字にしておいたので、英語の語順との違いも楽しんでみてください。

1. There are a lot of students that[who] want to be doctors. 
  (関係代名詞主格)

  医者になりたい学生がたくさんいる

2. The building that[which] stands on the hill is my school. 
  (関係代名詞主格)

  丘の上に立っているその建物は私の学校です

3. I know (that) he is a doctor. 
  (名詞節を導く接続詞)

  私は彼が医者だと知っている

4. I am happy (that) you passed the exam. 
  (副詞節を導く接続詞)

  私はあなたが試験に受かってうれしいです

5. The book (that[which]) I bought yesterday was informative. 
  (関係代名詞目的格)

  私が昨日買った本は有益だった

6. I remembered the day (that[when]) you were born. 
  (関係副詞)

  私はあなたが生まれた日(のこと)を覚えている

7. I had no idea (that) I would became an English teacher. 
  (同格の接続詞)

  私は将来英語の先生になるなんて考えもしなかった

8. The news (that) my favorite singer will release the new album made me excited. 
  (同格)

  私の好きな歌手が新しいアルバムを発売するというニュースは私をわくわくさせた

9. It is my high school classmate (that) she introduced as her fiancé. 
  (強調構文)

  彼女が婚約者として紹介したのはね、私の高校のクラスメイトだったの


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