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あなた、シャミーっていうのね!?

【Preface】

普段の記事がなんか10000字から、みたいな謎の分量を記録してしまい始めたので、もうちょっと軽く、日々の言語に関する学びとか気づきを残しておくべくこのマガジンを始めました。形式とか目次とか、なるべく気分任せにフォーマット化せずにいこうと思ってます。

役に立つかとかは完全度外視です。as the title shows.ね。英語をツールとしてとか、ビジネスの道具にするための目線からばっかり見てると、なんだかさもしい気持ちになってしまうので、言語を愛おしむ私の心を守るための、いわば柔い側です。オタク側ともいう。

未知との遭遇の経緯から調べ方、一応の結論までの道筋なんかも徒然と書いていくので、言語学習の一助になったりしないかなー、なんて淡い期待も抱いてます。

てことで、記念すべき第1回は、最近一番の衝撃だったこちら。

あなた、シャミーっていうのね!?!!?

どうぞお楽しみください。


【Encounter the Unknown】

例のごとく真っ赤っかなユニフォームを見に纏い、ケアンズ市内のレンタカー屋で洗車に励んでいた時のことです。

イメージカラーで、この店1番の高級車でもあるフォードのマスタングを借りに来たお客様が、傷の確認にやってきました。

開閉式の屋根のスポーツカー。4人乗り。
かっこよさは私にはよくわからない。

そのチェックの仕方からも、なんとなくfussy(細かいことにこだわる)な感じは受けました。ただ、スポーツカーをレンタルする人には特段珍しいことでもなかったので、以下のようないつもの案内も伝えておきました。

We'll keep the records of the damages and take pictures of outside every time.
But you can also take pictures if you want.
損傷の記録は取ってあるし、毎回外装の写真は取ってます。
でもご自身でも写真を撮ってもらっても大丈夫ですよ。

すると、彼が何かを聞いてきたのです。オーストラリアの人なのは分かりましたが、スピードもアクセントも、アメリカ英語をメインに学んできた私の耳には、少々難易度が高かった。ただ、何かを使いたいのは分かりました。

Do you have シャミー?

しゃみー???

アクセントのせいで聞き取れなかっただけかとも思ったのですが、近しい単語すら「洗車場で車に対してお客さんが使うもの」で脳内検索してもヒットせず。ただ、車のボディを拭くような仕草をしていたので、シャミーがなんだかは分かりませんが、ボディを拭くか何かしたいのは分かりました。

この辺りで同僚が現れ、お客さんと話すのを聞いていたら、車体が濡れたまま走るのは嫌だから水滴を拭き取って欲しいとのこと。その会話の中でドライシャミーという単語が聞こえたのも大きなヒントになりました。

少しだけ補足しておくと、私のバイト先では、車体を洗車した後、窓ガラスの水滴だけは窓拭き職人さんが使うような取手付きのワイパーで拭うのですが、ボディは特に何もしないんですよ。ケアンズは暑い日が多いのですぐ乾く日が多いのもあるとは思いますが、そもそもそこまでやりません。機能的には影響ないから。日本の某大手レンタカーショップでは、バスタオルでざっと拭き取っていましたが、ここではやっていませんでした。そして半年ほどここでバイトしていましたが、それを要求してくるお客さんにも遭遇せず、外装を拭き取るという工程は、すっかり私の脳内から抹消されていたのです。あと単に「シャミーって何」という疑問に取り憑かれていたのもありますね。

【Arrival of Hero】

彼の要求は分かったものの、この店に車体を拭いてもいいような乾いたバスタオルなんて置いてないし、私的にはシャミーの謎も解けてない。そんな時です。

Hi mate!! How are you today!?

バイクが好きで、やんちゃなちょいワル親父。ホストファザーみたいに接してくれる店長パパMikeが救世主よろしく現れました。お客さんと少し、私にはついていけないネイティブおじさん同士の対して口を開けない英語で会話をし、Mikeの個人的な棚の中から何かを取り出し、同僚にこれを使うようにと言って渡しました。私はすでに別の車の洗車に取り掛かっていたのですが、見えたのは何やら円柱状の筒。卒業証書入れを短く太くした感じです。その中からくるりと巻かれた布を取り出していました。

Mikeも
Sorry for your inconvenience as we have never received such a request since we started our business here.
不便をかけて悪かったね、うちもここで商売を始めてそんな頼み聞いたことなかったからさ
みたいなことを言っていたので、やっぱりケアンズでは外装まで拭き上げることはほぼないみたいです。ただ、後で聞いたらこのお客さんは息子の結婚式に行くのにこのスポーツカーを借りたんだとか。フォーマルな場所に出向くから、車もちゃんと整った状態が良かったんだそう。

観光以外のニーズもあるのかー。そしてだからスポーツカーにはレンタカー屋のロゴとか、「綺麗に使ってねステッカー」とかが見えるとこにはないのね、とスポーツカー乗りの美意識に妙に納得しました。共感はできなかったけど。

【French-ish Word?】

客足が落ち着いた後、忘れないうちにとMikeにシャミーとはなんなのかを聞きに行きました。ググっても良かったのですが、できるだけ英語は使い手からまず教えてもらうようにしているのです。その方がリアルな会話の中での学習になるので、忘れにくいので。

Thank you for your help, Mike. Could you tell me what シャミー is?
How do you spell it?
さっきは助けてくれてありがとう。シャミーってなんだか教えてもらえますか?どうやってつづるの?

こんな感じで聞いてみました。すると、「車を拭く用の布だよ。スペルは多分…chaoi…xかな?フランス語っぽいんだよね〜」みたいな回答が。相手の言葉までは原文ままで覚えておけなかったので私の日本語にて失礼しますが、マグカップを洗いながら答えてくれたのはそんな感じの回答でした。

ひとまず教えてもらったことにお礼を言い、いそいそと休憩時間を待って検索。が、ここでちょっと問題が。

【Wrong Spelling?】

chから始まるフランス語源ぽい単語で、ブツに該当するものが見つけられなかったのです。いくつか検索パターンを変えて調べてはみました。

a word cloth starting with ch ending with x
a cloth for wiping cars ch
a French word which means cloth

とかまあ、こんな感じ。Googleさんが斜体字の「もしかして:chamois」と表示してくれるものを見ても、目に飛び込んでくるのは、布とは全く縁もゆかりもなさそうな、ヤギみたいな四足動物。

この辺りでMikeから聞いたスペル自体を疑い始めた私は、ワンチャン、と思って聞こえた通りのスペルで検索してみました。

shammy cloth

すると、予測変換にも"shammy cloth for car"の文字が!!!
下手に間違ったスペル聞いちゃったから遠回りしたわwwwと心の中でMikeに突っ込みつつ、私の疑問全てに答えてくれる記事が見つかりました。

Chamois is pronounced as shammy, which often confuses people when they are looking for a genuine chamois cloth for drying their car. In car detailing speak, a chamois is a drying cloth that gives you a spot-free finish after a car wash

はい、皆さん読解できました?ざっくりとした訳をしていきますよ〜(突然の講師モード)

Chamoisはシャミーと発音され、車の外装を拭き上げたい時にシャミーを探している人にとっては紛らわしいことがある。車の整備に関して言えば、シャミーとは洗車の仕上げに使う拭き上げ用の布のことである。

【We Use It!】

さらに笑ってしまったのは、記事をスクロールしてついにシャミーの画像をみた時。

普段内装を拭くのに使ってるやつですやん!!!

そう、こうして今日のタイトルに戻ります。
お前、シャミーって名前だったんか……みんなclothとしか呼ばないからわかんなかったよ……。千尋を千て呼ぶとかそんな生やさしいレベルじゃなく、人間て呼んでたようなものか……。ごめんな、シャミー…もう覚えたよ、今後その名前で呼ぶ気もしないけど……。だってうち、シャミーもシャミーじゃない布もごっちゃにして洗車に使うから、clothで用が足りちゃうんだもの……。

確かに記事の説明にもあるように、この布、布の形をした激落くんみたいな感じなんですよね。絞るとめっちゃ水分出せて、すぐ乾く。メラミンスポンジ(激落くん)よりも本体に汚れが残らない。車のドアと車体の隙間とか拭いて黒くなっても、水で濯ぐだけで綺麗になるんです。

この特徴書いてたら確かにシャミーって呼び分けてあげてもいい気がしてきたな。でも同僚に通じるのかはまた別問題なんですよね。難儀。

スペルもshammyじゃん。

【Encounter Again】

今回の学びが面白かったのは、実はまだ続くんです。
検索していた時に出てきた、「もしかして:chamois」と、引用した文章の冒頭の単語、同じスペルでしたよね。

この黄色い不思議布とあのヤギに何の関係が……?

そう思い、改めてきちんと検索して目を通してみました。
はいみなさん、読解2本目いきますよ〜

Chamois Leather is named after the short-horned goat-like antelope (Rupicapra rupicapra) found in the mountains of Europe and Asia Minor. Their skins when tanned and divided, produce a soft absorbent and non-abrasive leather. Today however, mass-market chamois is most commonly produced from sheep, goats or deer hide.

まさに私の質問に答えてくれそうな記事のタイトルですね!
そして上の引用の訳はこんな感じ。

シャミーレザーはヨーロッパと小アジアの山中に生息する、角の短い山羊のようなアンテロープ(ウシ科の偶蹄類の総称。カッコ内は学名)から名付けられました。この動物の皮膚をなめし、切り分けると、柔らかく、摩擦のない吸収性のある皮になります。しかしながら、今日のシャミー皮の大半は羊やヤギ、鹿の皮から作られるのが一般的です。

画像の生き物も、ちゃんと「シャミー」だったんですね。
思いこみで除外するのは良くない。

【Postscript】

そんなわけで、それ以降洗車で件の布を手に取るたびに心の中でシャミー…と反芻しているなんちゃって言語学徒です。
ここまで色々と聞いたり調べたりしたことで、赤いスポーツカーと黄色い布、そして茶色い山羊めいた四足動物が私の脳内では完全に一緒くたになってシャミーという名前の引き出しに詰め込まれました。
fussyなお客さんありがとう。

その日の温度感そのままの記録は以下。肉声もあり。







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