凄いぞパパさんフィルター
昨今、スマートフォンの写真アプリの加工技術の向上が凄まじい。様々なフィルターが用意され、顔や目の大きさ、肌の質感などを自由に加工できる。もはや鏡の映る素顔とスマホに作り出される顔のどちらが自分の顔かわからなくなっている人も多いのではないだろうか。
そんな令和日本で最も強力なフィルターをご存じだろうか?それが『パパさんフィルター』である。
パパさんフィルターとは子供連れのおじさんに適応されるフィルターであり、単身では世間から警戒される不審な中年男性を社会から包摂される優しいパパへとグレードアップさせる効果がある神フィルターだ。おっさん単身でママさんと子供たちで活気づく公園に突撃すれば一瞬で公園の空気はピリついてしまう。おっさんに近寄って来てくれるのは『こいつ寂しそうだし俺らに餌をくれるタイプのニンゲンじゃねーか?』と期待する鳩たちだけである。
しかしおっさんの後ろにボールとグローブを持つ子供が一緒の場合はどうだろうか?公園の空気はほどけ、危険分子と見做されていたおっさんは子供とキャッチボールをしに来た子煩悩の優しいパパさんへと変身するのである。
ポリコレ先進国の日本において誰も表立っては言わないことであるが、何者でもない中年は結婚して子供を授かることで、初めて社会の一員として人々に受け入れられる。社会はお一人様でも楽しい人生!などと建前を並べ立ててはいるが、本音の部分では『アラフィフにもなって未婚で子無しの人間には何か問題があるのではないか?』『共感力や協調力に欠けた人物なのではないか?』と疑いの目を向けている。特に中年男性は中年女性よりも身体的脅威があるため社会から警戒の対象として見られてしまうことが多い。
しかしそんな中年男性も子供連れとなるとその扱いは一変する。子育てを経験した男性ならみな経験するだろうが、小学生以下の子供を連れて公園やスーパー、ショッピングモールなどを歩いていると様々な人から声をかけられるおことが多い。
特に大阪は土地柄もあるのか、高齢者や同じ子供連れの人々から『可愛いねーいくつかな?』などと笑顔で話しかけられる場面に遭遇する。お店で買い物をしていても、店員さんたちがおっさん1人で買い物している時には絶対に向けないであろう満面の笑みで子供に手を振ってくれる。うっすら疎外されることが日常になりすぎていて、子供が出来て初めてそれに気が付く男性も多い。
またパパさんフィルターほどの効果はないが、カップルフィルターも存在している。彼女連れの男性も子連れほどでないにしろ社会からの包括度は高まる。よく”男性は社会から疎外され女性は社会に包括される”という言説をツイッターで目にすることがあるが、男性も結婚し子供を授かるなどの人生スゴロクを進めていくことができれば社会に包括されることが可能なのだ。そしてこの社会からの包括され具合というのは男性の自己肯定感へダイレクトに影響を与えてくる要素でもある。
家族のために身を粉にして働く家族のATMオヤジ達がどこか満たされた様子なのも、子供を育てていることで社会から承認されることを実感し、自己肯定感が高まっているからである。また会社で役職を持つ中高年男性たちのほとんどは既婚者であるため、年下の若い既婚者部下をとてもかわいがる傾向が強い。若くして結婚し家族を養っている部下のことを、上司たちは良い意味で色眼鏡で見てくれるのである。そのようなこともあり、既婚男性の幸福度は前世代を通して高い。
逆に未婚独身男性の幸福度が非常に低い。彼らの幸福度を削り取っている大きな要素が社会からの疎外感である。そして恐ろしいことに独身男性への社会の警戒心は年齢と共に高まっていく傾向がある。40台以降の独身男性が幸福を感じる割合は24%しかなく、不幸だと感じる割合の方が優位に高い。前世代を通して不幸を感じる人の割合が幸福を感じる人よりも多いのは40台50代の未婚男性だけだ。未婚男性の本当の闘いは40台以降であることは間違いない。
そして既婚男性の幸福度を高めているのは社会からの承認だけではない。子供を授かることはおっさんの社会的地位を向上させるだけに留まらず、様々なプラスの効用を中年親父に与えてくれるのである。パパさんフィルターはおっさんが自分自身を見つめる時にも適応され、男の人生を良い方向に変えていってくれる。
では具体的にはどのような男の人生への効能をパパさんフィルターは与えてくれるのであろうか?
ここから先は
¥ 250
サポート頂けるとnote更新の励みになります!いつもサポートしてくださっている皆様には大変感謝しています。頑張っていきますので、どうかよろしくお願いいたします!