『我が家の餃子』は三代目?
結婚したとき義母から「我が家の餃子はニラをたくさん使うのよ」といわれ、しばらくは、牛と豚の合い挽きで30個作るのにニラを3束ぐらいいれて緑色の餃子を作っていた。
具の味付けは、義父の「すべての調味料を混ぜると美味しい」という持論に合わせて、塩、醤油、ソース、ケチャップ、こしょう、生姜、味噌などを少しずついれて調整。
皮につめる前に、一口サイズをフライパンで焼いて味を確かめ、ポン酢(醤油と酢とラー油の代用)などをつけなくても食べられるような餃子に仕上げた。感触は少しかためだったけど美味しかった。
私の実家では、母が豚の挽肉にタマネギをみじん切りにして、なぜかパン粉や卵をいれ、塩胡椒ぐらいで肉にあまり味はつけず、そのまま残ったらハンバーグの種になりそうなものだった。なので私は餃子を2つに割って、たっぷりポン酢をつける癖がついていたから、義実家の味付き餃子に最初は戸惑った。
緑色の餃子はしばらく我が家の食卓を賑わしたが、そのうち主人も配置がかわって、人に会うことが多くなり、子ども達も思春期にさしかかってきたとき、次の日まで匂いの残る餃子は早々に打ち切りになった。
その後はもう、私のオリジナル餃子が我が家の味となった。ニラやタマネギの代わりに大量の白菜(水分が出る)に卵や牛乳も加えて、豚肉、牛肉のほか鶏肉もいれ(食べ盛りの息子達のために、かさ増し)、調味料は同じくすべてを使って味を調えるというもの。フライパンで焼いて食べて味を確かめるのも踏襲した。
伝統?と呼べるほどのものではないが、ニラにはこだわらずに、白菜を採用することで、安いひき肉も、肉汁が溢れた感じに仕上がり、ふんわりとやわらかな食感に変わった。
我が家の餃子といえども食べる人や作る人によって変遷していっていいと私は思っている。今、イスラエルにいる次男は、宗教的な理由から豚肉を食べない場所で、一回に100個から200個ぐらいの餃子を作る。
毎日が餃子でもいいという餃子愛にあふれた子に育ったため、結婚したときに、私から聞いたレシピで、お嫁さんには餃子を我が家のやり方で作ってほしいと、自らが作って伝授した。
しかし、豚肉はロシア人のお店で手に入るが、白菜はたまにしか手に入らないため、餃子にはキャベツを大量にいれることに…。これがまたうまくいった。私が滞在していたときもお嫁さんがタネを上手に作ってくれて、とてもおいしかった。日本と同じ調味料もなかなか手に入らないので工夫していた。
お義母さんの味を受け継いで、これが我が家の餃子ですと言い切る彼女を見て、少しうれしかった。でも私は「もちろん、あなたの味が我が家の味だからどんどんいろいろ変えてみてね」と答えた。
そんな寛容さが日本のさまざまな場所で、新しい餃子や、ご当地名物を生み出しているのかもしれないと思った。
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