USJ編(5)〜空飛ぶハロウィン〜


あちこち周り、昼飯を早めにとる。

ここで食べたかったけど
却下されスルー😭



グッバイ五条🖐️



という訳で、お昼はスヌーピーの店でサッと食べてGO!



ここからは、娘と私で別行動。


娘には秘めたるミッションがあった。

それは、キャンディ集め。
USJでは、ハロウィン期間中にパーク内にて、カボチャのポーチを下げたクルーを見つけて「トゥリックア〜トゥリィッ!」と話しかければキャンディがゲットできる。
これを完遂したいという。

「リュックをキャンディでパンパンにするから黙ってみておれ、そこのオーク顔!」

娘は鼻息荒く宣言する。


…オーク顔ってだれのことですか(涙)
まったく、『異世界おじさん』の影響か…。


娘はそう言いながらも、あっち見こっち見しながらトコトコと探し回るが、かぼちゃポシェットのクルーをなかなか見つける事が出来なかった。

娘は程なく、横にあるお土産ショップに飛び込み、店員のおねえさんを捕まえて聴き込みを始める。

「けっこー探すのむずかしいのよ〜。ふふっ、こっそり教えてあげる…ほら、あそこにおにいさんいるでしょう、あの人がそうよ〜。あのかぼちゃポシェット、あれが目印よ。園内にはいっぱいいるから。がんばって、ファイト!」

娘は小さな両肩をひょいと気持ち上げながら真剣におねえさんの話を聴いている。

そして両肩を上げたまま、ぺこりとお辞儀しつつ、かぼそい声で「ありがとうございます」というと、クルッと踵を返し、教えてもらったおにいさんのところに、小走りでかけてゆく。

問題を解決するために勇気を出して自ら動く娘の後ろ姿に、大きく満足しながらも、自分には訊いてこなかったという一抹の哀しみは心の奥にしまっておく。

とっとこはしり、お兄さんを目の前にした娘はふたたび、小さな両肩をヒョイと気持ち上げる。
めいっぱいのほっそい声がUSJを飛び跳ねる。

「とりっくあーとりっ!」


クルーのおにいさんは満面の笑みで、かぼちゃのポシェットをチィィイっと開く。「はい、はっぴぃはろうぃん」優しい口調でそう言いながらゴソゴソとキャンディを1つ取り出して、柔らかな所作で娘の手のひらに渡す。

上げっぱなしの両肩をそのまま維持しながら「ありがとうございます」ぺこりと頭を下げる。

受け取ったキャンディをひとしきり眺めたあと、おもむろに自分のリュックにしまった。

わたしはクルーのおにいさんに写真いいですか。といい、ファーストキャンディ獲得記念の一枚を撮った。

要領を掴んだ娘の目が望遠鏡の如くグィ、グィーンと伸びる。頭から月着陸船のようなアンテナが飛び出し一気に覚醒する。

ここから怒涛のキャンディーラッシュに入る。

疾風はやてのように人混みを駆け抜け、クルーを捕まえてはキャンディを収集する。

小さい体はひたすら駆ける。
しゅるしゅる、しゅるりと人を縫い縦横無尽に駆け廻る。

私も負けじとかぼちゃポシェットを探す…不審者の如く、周りを舐め回すようにねっとりと視線を這わす…

み つ け た ぞ …

ひざの関節がゆっくりと沈む。
体重をのせてエネルギーを蓄える脹脛ふくらはぎ

イメージはできている。 

跳躍をするようにエネルギーを解き放ち、大地をむしるように跳ね上げて飛び出す。

イメージはできている。

前傾姿勢、腕の振り…腹筋背筋大胸筋…からだが動く、走り出す!


自慢の鈍足が地面を踏みながら進む…
…おそいおそい…鈍い刺激が膝を襲う!
オーバーな動きに見合わぬ遅さ…


駆け出してすぐ
四方八方から一斉に声が聞こえてきた。


「あぶない!」
       「おとうさん下!!」
「オーマイガー!!」
        「ノーウェイ!!」


スネになにかが引っかかる…
「えっ…」
下半身が捩れるように縺れ、流れるように上半身も体勢を崩す。

アラフィフ中年は
パルクールのように宙を舞う…ゼロ、グラビティ…

のっそりと引っかかった何かを軸にして地面に向かって弧をえがいて倒れ込む。


はうっ…ズサーーーッ!!!

かぼちゃポシェットのおにいさんが駆け寄ってきた。
私は慌てて口をひらく。

「と…とりっくあ〜とりい〜」

野太く、すがるような声がUSJに滲むように吸収される…。地べたの冷たさを頬に感じながら体を捩っておにいさんの顔を見上げる。


ちょっと離れてヒョロ高いアングロサクソンが歯ぐきむき出しにして、腹抱えて笑っている。

かぼちゃポシェットのおにいさんは「お怪我はありませんか」と心底心配そうにしゃがみ込む。

「大丈夫です、とりっくぁーとりっ!」

早口でキリッと答える。

ムスメは、『見てはいけないものをみた』という顔つきで、かける言葉も見つからないまま、少し離れて立ち尽くしていた。


かぼちゃポシェットのおにいさんは、ゆっくりポシェットのチャックを開けだしたので、私は慌てて

「むすめに…」

とだけいいながら、娘の方に手を向けて促した。

ムスメは小さい肩をめいっぱい上げて、ひきつった顔はひたすら下に向けながら、消えそうな細い声で

「ありがとうございます」

今日一小さい声を絞るように出して、キャンディを頂き、そそくさとリュックにしまった。


私はゆっくりと立ち上がり、零れた涙を指で拭う…秋風が前髪を吹き上げる。


それにしても、私を宙に飛ばした膝下付近に張り巡らされた謎の青い仕切りはなんだったんだろう……今も解らない。

















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?