好きなひとと食べるごはん
ご飯を一緒に食べることで親密になること、ありますよね。
美味しいものを一緒に食べることで距離が縮まったり、「これをあのひとと食べたいな」と思い出したり。
友達、家族、恋人など、好きなひと大切なひとと食べるご飯は格別だなあと感じます。
そんな場面がたくさん出てくる、小川糸さんの「喋々喃々」。
タイトルの言葉は、「男女が小声で仲睦まじく話す様」。
アンティークきもの屋を営む女性・栞が、父親に似た声の男性・春一郎と出会って季節を過ごしてゆくお話です。
一緒にご飯を食べていく中で、2人の間の空気や、栞の気持ちが少しずつ変わっていく様子が、丁寧で鮮やかな描写で描かれています。
美味しそうなものもたくさん出てきます。
鳥鍋、天丼、穴子寿司、ポテトサラダ、あんみつ、アンヂェラス、カレーうどん、栗ご飯、すき焼き…
小川糸さんの描く美味しいもの、本当に心にぐっとくる。
綺麗なだけじゃなくて、丁寧なだけではなくて、本能にくる感じというのだろうか。「あぁ、食べたい」という気持ちになります。
舞台となっているのは東京・谷中という町で、実在のお店もたくさん出てきます。
栞の丁寧な暮らしの描写から、谷中の下町の空気が垣間見えるところも好きです。
いつか訪れて、実際に感じてみたいなと思っています。
朝晩ぐっと涼しくなって、空気に少し甘い香りと冬の匂いがするようになってきました。
秋の夜長に、一冊いかがですか?
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