職業地下アイドルでした

母が電話越しに泣いていた。匿名の掲示板で娘が晒上げられ、そして無抵抗のまま侮辱されるざまを見れば誰だってそうなるに違いない。「可愛がって育てた娘が知らない人に悪く言われるのに耐えられない」

母を叱った。夢があるから私は耐えていたのだから。母が泣いた数よりも多く私は泣いていた。悲しかった。輝けば輝くほど打たれるのだから馬鹿馬鹿しい。強くなれる言葉を探しては幼い頃に聞かされた子守歌なんかよりも耳に入れてた。

ステージに立つのが怖かった。最後の方には信じられないミスを繰り返した。先輩にぶつかったり、マイクを落としたり、理想のアイドル像とかけ離れていく自分が情けなくていつの間にかステージに立つことを拒否した。そして部屋からも出なくなった。精神科に初めて行った。「地下アイドルという職業が僕は詳しくわからないので…」当然だ。アイドルという職業すら、ましてや地下アイドルなんて職業は本人達ですら説明できないのだから。


私はもう終わりだと悟った。そもそも向いてないとも言われた。応援してくれる人は今でも大好きだ。だけどその場所で出会ったそれ以外の人の顔一人一人覚えていて、一人一人をしっかりと恨んでいる。全員が敵だった。

職業は地下アイドルでした。その仕事を離れた瞬間は、咲く場所が悪かったのだと思い他に咲ける場所を探した。どうしてもまたステージに立ちたいという一心だった。

でももういいや

応援してくださった方

夢を見させてくれてありがとう。

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