読書日記116「コンサバター 失われた安土桃山の秘宝」−一色さゆり

今回は狩野永徳の屏風がテーマだった。日本史は好きだが、美術史には疎い自分でもこの作品を通じて歴史の流れを感じ、その奥深さを楽しめた。

当時の美術品が戦国大名などのパトロンから支援を受けていたことで文化として成立していたことは知っていたが、その多くが戦国時代の戦火によって消失していたことは知らなかった。武士の支援によって生計を立てている以上、その意向に従わざるを得ず、苦労して完成させた作品は戦火で失われることが多い。自分の支援者が政治的な立場遠失うと自分の命も危うくなる。なんとも危うい立場の中で文化を築きあげてきたのだろうと切ない気持ちになった。

最後の方では主人公スギモトの父が自分の人生を振り返って必要なものと欲しかったものが違ったことで大切なものを失ったと話している場面が印象的だった。欲しいものに執着し過ぎないこと、欲しいものと必要なものが異なる時どうバランスをとるかよく考えること、この2つには気をつけようと思った。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?