読書日記106「東京ロンダリング」-原田ひ香

事故物件は、一度人が入居するとその事故の経緯について不動産屋が新賃借人に対し告知する義務はなくなる。この本は、不動産会社からの依頼で家賃免除で事故物件に住み、日当を受け取ることで生計を立てている人物が主人公だ。気になって実際にそういう職業があるのか調べたが、さすがに出てこなかった。低い家賃でもお金を払って住むのと、家賃免除で日当を受け取って住むのでは大きな違いだと思うが…。

主人公は人生を諦めているようなどこか影のある人物だった。1ヶ月だけしかその家には住まないので、近所の人とは嫌われない程度の付き合いをし、娯楽はミステリー小説だけ。長期的に関わっているのは仕事上の付き合いのある人だけだ。しかし、住んだ家の大家から干渉を拒み切ることができず、少しずつ主人公の生活が変わっていく。最後の場面で自分本位(というよりも自分のことしか考えなくて良い状況にある)主人公が人のために動いた様子に温かい気持ちになった。

主人公の生活の続きが気になったので、ここで終わってしまうのかという気持ちもあったが、非現実的で淡々としていて面白い本だった。

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