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『東京物語』の不思議

ここ数日、小津安二郎の『東京物語』がずっと頭から離れない。淡々と日常が進行する作品なのに、不思議と引き寄せられる。なぜかと考えてみれば、日常が、東山千栄子演じるとみの死を境に「淡々としながら」大きく変化しているからではないか。

冒頭〜とみの死まではゆったりと進む。しかし、それ以降は嵐のように家族が集い、去って行く。去った嵐に残された者たちは心の底を吐露する。深い底に眠っていた登場人物の真の想いが見えるこの瞬間が、ずっと頭から離れない作品たる所以なんだろう。誰かの真の想いに触れたくて、われわれは日々生きているのではないか。

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